孤独や不安の中にいる妊婦 支えて20年以上「こんなにも困っているんだ」 助産師が語る現実と支援
■減らない0日死亡に対する思い
まつしま病院が社会的なリスクを抱える妊婦への支援を強化してきた一方、統計上は誕生0日の死亡や0歳児の死亡が多い傾向は変わっていない。 「予期しない妊娠が虐待のリスクだということも、ずっと言われてきています。私の中での問題意識は、そうした状況にもかかわらず、性教育が進んでいかないことにあって、怒りに近いような感情も覚えています」 「どうすれば妊娠するか知らない人があまりにも多すぎるし、そのことが自分の身に降りかかってくるという意識を持っていない人が本当に多いです。実際、妊娠は女性1人では成立しません。でも、自宅で出産したとか、どこかで産んで殺してしまった場合に、いつも女性の名前ばかりが出てきて、相手の男性の名前や処罰は一切出てこない。裁判になれば詳細が流れることはありますが、そういう報道を見るたびに、私たち医療機関の人間としては、その人の背景に何があったのかな、相談できる人がいなかったのかな、気づいてくれる人がいなかったのかなと考えます」
■伴走型相談支援への懸念
こうした状況も踏まえ、ことし、孤立しがちな妊婦・子育てを支える伴走型相談支援がスタートしたが、長く社会的にハイリスクな妊婦と関わってきた立場から、行政の支援では信頼関係を築くのは難しいのではないかと指摘する。 「地域だと異動があるので、数年で担当が変わるデメリットがあると思います。もちろん医療機関もスタッフの入れ替わりはありますが、私はこの施設がすごく長くなったので、当院を何度も選んでくださる方には、『また産みに来てくれたんですね』と声がけしますし、あそこに行けばこの人がいるみたいな、病院はそういう存在になれると思います」 「反対に、行政ではずっと1人で追うのは難しい。東京都のゆりかご面接では、面接のときと実際の担当保健師さんが違うことがあります。さらに、自宅に伺う伴走型支援では、地区担当の保健師さんが行く場合も、委託業者さんが行く場合もある状況です。もちろん情報は共有していくので、いろんな人、いろんなスタッフが関わることでのメリットももちろんあります。ですが、中には関係性を築くのが難しい妊婦さんもいらっしゃるので、信頼関係を築くという意味では、1人が長くお付き合いした方がより関係が深まり、問題が見え、ケアが行き届くと思います。そこは行政の関わりでは、制度・システム的に難しい部分だと思います」