孤独や不安の中にいる妊婦 支えて20年以上「こんなにも困っているんだ」 助産師が語る現実と支援
■妊娠中は親になる準備の時期
サポート、という意味でパートナーも重要な役割を担う。まつしま病院では、必要に応じてパートナーも交えた面談を行っている。 「『男性も育休を取りましょう』という社会になってきましたが、まだまだ育休が取れる企業にお勤めの方ばかりではないので、パートナーに頼るのが難しいのであれば、産後ケアを利用しませんかと提案します。料理が全くできない男性も比較的多くいらっしゃいます。産後って赤ちゃんのお世話しながら食事の準備をするのが本当に大変なんです。だから、ご飯すら炊いたこともない夫には、妻の妊娠中は、せめてご飯を研いで炊ける、お味噌汁を作れるぐらいまでにしておける期間にもなるわけですね」 「ただ単にお腹が大きくなるのを待つ、赤ちゃんが順調に育つのを待つ期間ではなくて。モノを揃えるということもそうですが、自分たちのスキル・生活力を上げることもできるので、妊娠期間を大事に使ってほしい。なるべく妊娠中の早い時期から、時間をかけて、やれることに取り組んでもらう。それで夫婦がお互いに結束を高めていって、赤ちゃんを迎えてもらうみたいなところができればいいのかなと。妊婦さんだけでなく、状況によってはパートナーさんも交えて、こういうことに取り組んでもらいたいですがいかがですか、と面談しています」
■産後の入院延長で“なんとなくやれるかも”まで
「産後、退院までの期間、産院さんによっては夜に赤ちゃんをお預かりする『母児異室』を勧めるところもありますが、当院では基本的に『母児同室』にしています。今の社会では、こどもと触れ合う機会が本当になくて、赤ちゃんがどういうものかわからないで親になっていく方が多いので、例えば、新生児は夜の方が起きているということも知らない。だから、私たちにとっては当たり前の、昼間赤ちゃんが寝ているときに一緒になって休んで、夜泣きに対応しないといけないよっていうのがわからない。そうした母親がそのままご自宅に帰ると困っちゃうわけです」 「また、最近はマンション・アパート暮らしの方が多いですから、音や泣き声がすごく心配とか、通報されることもあったりする。寝ている家族に起きて手伝ってとSOSを出せず、母親なんだからやらなきゃいけないというプレッシャーもある。だから院内でなるべく一緒に過ごして、夜の赤ちゃんの様子もわかって、“なんとなくこんなもんかな”って思って退院してもらいたい。夜の授乳とか、赤ちゃんの泣きにも対応できるように、夜勤のスタッフもなるべく手厚く配置してケアしています」 「通常は5日間の入院ですけど、不安を抱えている方々には、産後入院制度を利用して入院期間を延長し、少し自信を持って帰っていただくことも妊娠中から提案しています。江戸川区とか葛飾区の場合、公費で6泊7日まで延長できるので、それだけの期間延長するとスキルも上がってくるし、赤ちゃんに対応する慣れも少し生まれてきて、自分なりのリズムも少しつかめてきますので、1週間延ばしてよかったと言って退院される方も比較的多くいらっしゃいます。そのようにして、ある程度の自信を持って帰ってもらう、あるいは自信まではいかなくても、なんとなくやれるかもっていう気持ちになって帰っていただいています」