孤独や不安の中にいる妊婦 支えて20年以上「こんなにも困っているんだ」 助産師が語る現実と支援
■心配していることを伝える
「本来はすべての妊婦さんに同じようにお話を聞ければいいのですが、いろんな制限の中で、ある程度リスクの振り分けをしています。そして、社会的な課題やリスクがあるという方に対して、妊婦健診で産科的な診察をした上で助産師と話す別枠の外来を設けます。初回は1人30分程度ですが、1時間ほど話す方もいらっしゃいます。本来の健診とは別枠で、妊娠や出産、育児に関する困りごと、心配事を尋ね、逆に病院として『あなたのこういう部分が育児に影響しないか心配しています』とお伝えする外来にしています。話してすごく良かったとおっしゃる方もいれば、なんでそんなことまで病院に聞かれなきゃいけないんだと拒否的な態度をとられる方ももちろんいらっしゃいます」 「この支援外来では、助産師とソーシャルワーカーの2人で、妊婦さん1人と面談するので、かなり人件費・労力をかけているのですが、料金はいただいていません。それでも取り組むほど、この部分に当院の問題意識があると言えるかもしれません。その方が抱えている課題が、育児に影響するんじゃないかと病院は心配しているから、相談や力になれることがあったらお話してほしいというスタンスです」 「ご理解いただけず、転院される方もいらっしゃいます。自分たちの持てる力は出しますが、それを受けるか受けないかは妊婦さんに選んでいただいています。妊娠中1回の面接で終わる人もいれば、多い人だとほぼ毎回、妊婦健診のたびにお話を伺うこともあります。課題が重い方もいらっしゃるので、一緒にどう乗り越えるか、どう向き合っていくかを考えることに時間を割かせてもらっています」
■リスクはどう見つける
支援につなぐための、社会的リスクの判断は、初診時に限らず、また医師・助産師・看護師を問わずに行う態勢を取っているという。 「繰り返し会う中で、違和感があるなと感じることもあります。分娩が近くなって、不安が強まる、高まる方もいらっしゃいます。どのタイミングでも、この人ちょっと気になるとか、病院として話を聞いた方がいいよねと感じたら、外来の医師でも助産師でも看護師でも、とにかくどこかで引っ掛けてもらって、キャッチされた方に関しては、外来、妊婦健診とセットで来ていただく」 実際にどのような妊婦が社会的ハイリスクと捉えられるのだろうか。 「精神疾患合併とか既往の問題、DV、経済的な貧困の問題もあります。また、今でこそ“できちゃった結婚”という言葉が一般化して、プラスのイメージで“授かり婚”と言うなどしますが、やはり結婚し他人と暮らすストレスが絶対的にあると思います。生活が大きく変わるし、他人と暮らすにあたって様々な生活習慣のすり合わせもしなければいけない。うまくパートナーと暮らせているかもリスク判断の要素です」 「今は就労している方がほとんどですが、マタハラの問題もありますし、妊娠しながら働くことが大変な方もいらっしゃいます。あとは育児の支援者がどれだけいるか。親御さんが近くにお住まいでも現実的にはサポートがない方、親御さんがまだ現役世代だとサポートできる状況にないとか、晩婚化で育児と介護のWケアという方もいらっしゃいます」