販売しなくても替え歌はNG? 「森のくまさん」論争にみる著作者人格権とは
童謡「森のくまさん」の歌詞を勝手に替えられた上で、CDとして販売したとして、英語歌詞を和訳した馬場祥弘氏が1月、レコード会社・ユニバーサルミュージックと歌っている芸人・パーマ大佐に販売差し止めと慰謝料などを求める通知書を送ったとされる問題。2月1日、双方から円満に解決したことが伝えらましれたが、一体何が問題だったのでしょうか? 【画像】AI小説や絵画などの著作権問題 考えられる課題と方向性
改変者が敬意を払っていても×
「森のくまさん」は、アメリカ民謡が原曲とされ、日本語版の作詞者(訳詞)は馬場氏となっている。パーマ大佐の替え歌は、「ある日 森の中 くまさんに 出会った」「花咲く森の道 くまさんに出会った」と馬場氏の訳詞で始まるものの、「ひとりぼっちの私を だきしめたくま」「だけど私はダメな子 人には言えない過去がある」などの独自の歌詞が加えられています。馬場氏はこの改変を承諾していないとして、「著作者人格権の侵害にあたる」と主張していました。
この問題に対し、骨董通り法律事務所の桑野雄一郎弁護士は「馬場さんが指摘したのは、同一性保持権という『著作者人格権』の一つです」と説明します。同一性保持権とは、著作物の内容について無断で改変することを禁止する権利で、著作権法20条1項で「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」と定められているのです。愛着のある著作物が他人に無断で変えられ、著作者の意に沿わない表現がされた場合、その精神的苦痛から救済することを目的としています。 ここで重要なのは「著作者の意に反して」という点で、桑野弁護士は「改変者がその著作物に対して愛着があって、敬意を払っていたとしても手を加えるとアウト」と説明します。また利益の有無なども問題ではなく、例えば子どもが面白半分に独自の歌詞を加えて学校などで歌うことも、厳密にはダメなのです。さらに、この改変の度合いは「基本的にはどんな些細な変更でも同一性保持権の侵害が成立する可能性がある(桑野弁護士)」とし、漢字で書かれた言葉を勝手に平仮名に変更だけでも侵害となる可能性があります。