販売しなくても替え歌はNG? 「森のくまさん」論争にみる著作者人格権とは
翻訳者の場合にも適用される?
また、今回注目されていたのが、馬場氏は「森のくまさん」の作詞者でなく、英語歌詞の翻訳者だということです。訳詞者にも著作者と同じ権利があるのでしょうか? これに関し、桑野弁護士は「そこが著作権法では難しい論点となっています。原語を忠実に翻訳したものだとしても、楽曲に収まるように文字数を調整するなどの創意工夫はあるので著作者人格権自体は認められると思います。しかし、今回のように原語の翻訳自体に改変をしていない場合、原語の著作者はともかく翻訳者に人格権侵害を主張できる余地はないとの考え方もあります」というのです。 ただ今回は、原語と訳詞は単なる直訳ではないことから「オリジナルの歌詞と同じように考えられると思います(桑野弁護士)」と、「森のくまさん」における日本語歌詞について、馬場氏に著作権者としての権利があるはずだとしています。そして、報道を見る限りの替え歌ならば、「パーマ大佐は馬場氏の著作者人格権を侵害しているだろう(桑野弁護士)」としました。
まったく「別モノ」ならOK?
ちなみに、今回の騒動で再び注目されたのが替え歌メドレーなどで人気を博した嘉門達夫さんです。嘉門さんは、この件で取材が殺到したとして自身のブログ上で、「CD化する場合 出版社を通じて作家さんに『この歌のこの部分をこう替えたいです』と文書を送ります。作家さん(作詞者、作曲者の両方)からOKが出たもののみCDに収録出来ます」とし、CD化した作品はすべて著作権者の許可をもらっていると説明していました。 また嘉門さんは、過去に「森のくまさん」の替え歌を歌っていたこともありますが、その際は馬場氏に許可を取っていないとインタビューで明かしています。その歌詞は、出だしの「ある日」の部分をロックバンド「THE ALFEE」から借りて「アルフィー」と言い換え、その後に続く歌詞はメンバーの高見沢俊彦さん、桜井賢さん、坂崎幸之助さんの名前を出すものとなっています。嘉門さんは「アルフィーの事務所にもちゃんと許可を取ってあります」とする一方、翻訳者の馬場氏には許可を取っていないとコメントしています。 この点について、桑野弁護士は「完璧な替え歌。元の詞が全くなく、全然違う歌詞を乗せて歌うと、歌詞に関しては別の作品となるので問題が起きない」と話し、嘉門さんは馬場氏の同一性保持権の侵害をしていないと説明しました。つまり、「森のくまさん」の楽曲に、全く新しい歌詞を創作したということになるのです。