販売しなくても替え歌はNG? 「森のくまさん」論争にみる著作者人格権とは
「同一性保持権」という考え方
このことから、さらに桑野弁護士はパーマ大佐の替え歌について、「『ある日 森の中 くまさんに 出会った』などと、元の個別のフレーズ自体には手を加えていないのでセーフではないかとの意見もある。しかし、間に全く異なる詞を差し込んでしまった結果、同一性保持権でいうと侵害となった」と、その侵害かを判断するボーダーラインを指摘しました。 例えば「森のくまさん」をフルコラースで普通に歌った後に、別の歌詞を加えていただけでしたら侵害とならなかった可能性もあるのです。「歌詞と歌詞の間に差し込んだのがまずかった。ここまでが『森のくまさん』だったね。『ところで』というような形で、聞く側が本来の『森のくまさん』とはっきりパロディだと分かるようにしていれば、おそらく著作者は何か言うことはできなかったのではないか(桑野弁護士)」とし、元の詞とパーマ大佐独自の詞の区別がつけられないよう形で発表したことが「改変に当たった」としました。 ただ、今回の騒動の発端は「双方の認識に違いがあった」とのこと。改めてユニバーサルミュージックとパーマ大佐が、馬場氏に改めて経緯説明したところ、両者で訳詞の著作者人格権が馬場氏に帰属していることを確認し、馬場氏がCD販売やパフォーマンスを「快諾し、円満解決に至りました」としています。
--------------------------- ■重野真(しげの・まこと) 地方紙在籍中には支局/社会部に所属し、事件事故や学術文化などの報道に携わる。現在はフリーランスの記者として、雑誌・ウェブサイトで硬派記事を執筆するほか、ネットニュースの編集も手掛けている