<城が語る>ハリルJの初陣に見えたアギーレJとの違い
ハリルホジッチ新監督の初陣には「何をしたいのか」「どう日本を変えたいのか」という監督の意図と、それを選手がどう受け止めたかの形がハッキリと見えた。「2-0」という結果も含めて最高のスタートを切ったと思う。 スタートメンバーには、川又、藤春らアジア杯では選ばれなかった新しい選手を7人も思い切って使った。私は少し驚きを覚えた。ある程度、ポイントとなるベースの選手は固定しておき、マイナーチェンジくらいで臨むのかと予想していたが、大胆に変えてきた。しかも、協会が推薦したリストをベースとした選手選出ではなく、ハリルホジッチ監督が、自らJリーグを視察したときに目についた選手を選び、先発に使った。それがハリルの流儀なのだろう。選手のサイドからすればモチベーションが上がる。固定観念なしにフラットに評価してもらえることに加えて、「監督が視察にきた試合で自己表現ができれば選ばれて使ってもらえるんだ」となるとJリーグにも活気が生まれる。 チュニジア戦では、攻守にハリルホジッチ監督のサッカーのコンセプトが見えた。 攻撃は、少ないボールタッチ数で前へボールを運ぶ。横パスではなく、縦へ速くだ。ポゼッションを高めることに重点をおいて、なかなか前へボールを運ぶことのできなかった攻撃スタイルからの脱却を図ろうとしているのがわかった。縦へのボールを長谷部も積極的に使ったし、ボールを奪ってからの切り替えの速さもあった。 アギーレ前監督時代の「4-3-3」からザック時代の「4-2-3-1」にフォーメーションは戻ったが、そこにはサイドのスペースを突きたいという狙いがあるのだろう。ワントップの川又にも、中央で体を張って、ボールをコントロールさせ、サイドを使わせたいという役割を期待していたのだと思う。不幸にも、前半はチュニジアが予想以上に引いて守備的にきたため、永井のようにスペースを使ってスピードを活かすタイプの選手が持ち味を出すことができずに相手の守備を崩すことができなかった。彼らの連携やコンビネーションもスムーズではなかったが、まだ、そこまでを求めるのは酷だと思う。縦へ、前への意識を持たせたことを評価すべきだろう。 守備では、さらにアギーレジャパンとの違いが如実に見えた。 前半15分は、前から積極的に激しくプレスをかけて、ディフェンスラインを高く保たせた。ディフェンスをコンパクトに保ち、ハーフライン付近のどこでボールを奪うのかという約束事も徹底されていた。狙いをつけて縦のパスコースを切りにいくことにも選手は積極的にトライしていた。おそらく、それも監督の指示だろう。激しいマンマークで相手をフリーにさせないという意識も見えた。守備を自由にやらせていたアギーレ前監督時代とは大きな違いで、短期間で、よくコンセプトを浸透させたものだと思う。