<城が語る>ハリルJの初陣に見えたアギーレJとの違い
後半14分に本田と香川、岡崎とメンバーが変わってゲームは動いたが、この采配も見事だった。チュニジアは、相当疲れて、この時間帯から足が止まっていたが、その隙を見逃さず、連携には円熟味のあるメンバーを入れて勝ちに行った。就任記者会見で、この親善試合の2試合で勝つと宣言していたが、勝つためのマネジメントを披露して、結果に結びつけた手腕も評価できるだろう。 新しい選手で言えば、ボランチに復帰した山口蛍と長谷部との関係がよかった。山口は、うまくバランスをとりながら攻撃を潰す役目を全うした。 香川も一時期に比べてコンディションは上がってきている。ハリルホジッチ監督との会話も多いようで、自信を取り戻しつつあると思う。攻撃に速さと人数を求めるハリルのスタイルは、テクニシャンの香川には合っているのかもしれない。ただ、チュニジア戦では、相手が、ばてていて、ほぼノープレッシャーの中でのプレーだったので、まだ完全復活とは言えない。おそらく31日のウズベキスタン戦は先発出場するのだろうから、そこでどんな動きを見せてくれるかに注目しておきたい。 残念だったのは。後半途中から出場した宇佐美だ。代表初ゴールは、惜しくもゴールポストに嫌われたが、あのチャンスをものにできるかどうかが分岐点なのだ。確かに相手守備陣が、見にくい場所にポジショニングをとり、一瞬のスピードアップで抜け出した動きには非凡なものがあった。香川のスルーパスも宇佐美の動きで伝えた「出せ」というメッセージが導きだしたものである。できる選手だけに勿体ない。だが、今後、代表で生き残っていくためには、ああいうチャンスを逃していては苦しい。 初指揮のゲームで、このスタメンでスタートすることは監督としてのリスクは大きかったと思う。6月からは、もうワールドカップ予選が始まる。選手の能力を把握して戦えるメンバーを選別するためには時間はない。そのために「今やれることは何か」をつきつめる中でハリルホジッチ監督は、自らのスタイルと哲学を貫いた。彼にはプランが出来上がっているんだと思う。コメントを聞いていても、サッカーに対して真摯で真面目で正直な人物であることもよくわかる。予選までは、選手の力の把握が、彼の目的のひとつになっていくとは思うが、その中でどう連携を高め、さらにコンセプトを浸透させていくのか。非常に楽しみである。 (文責・城彰二/元日本代表FW)