世界シェア50%超のアドバンテストCEOが明かす強さの秘訣
2024年10月24日発売の「Forbes JAPAN」12月号では、「新・いい会社100」特集と題して、全上場企業対象、独自調査・分析で作成した、「ステークホルダー資本主義ランキング」「自然資本ランキング」「脱炭素経営ランキング」「サプライチェーンランキング」「リスキリングランキング」などを紹介している。それぞれのランキング上位企業、計8社のCEOインタビューや早稲田大学商学部教授のスズキトモ氏、東京大学大学院経済学研究科教授の柳川範之氏らのインタビューコラム等も掲載している。 2024年版「ステークホルダー資本主義ランキング」第3位に輝いたのは、半導体市場の活況を受けて、2025年3月期の業績見通しを上方修正したアドバンテスト。半導体検査装置市場で世界シェア50%超の実力を誇る同社CEOが語る「強さの秘訣」とは。 「2024年が当社にとって、こんなにいい年になるとは思っていなかった。多くの出来事が一気に起こり、平凡な一年が素晴らしい年へと一変しました」 半導体の需給の改善や生成AI関連の投資の活発化が期待されるなか、半導体検査装置で世界シェア首位を誇るアドバンテストのGroup CEO、ダグラス・ラフィーバは激動の24年をこう振り返る。 足元の業績は絶好調で、25年3月期の業績見通しを早くも上方修正した。より高性能かつ地球環境に配慮した半導体の開発が進み、アドバンテストが手がける半導体検査装置やテストソリューションの需要は今後も高まることが予想される。 ニーズが高まるということは、当社が提供する製品やソリューションが環境や社会、取引先などに与える影響が一層大きくなることを意味する。そんななか、ラフィーバは24年4月にGroup CEOに着任するや否や、第3期中期経営計画を打ち出すと同時に、同社のサステナビリティの定義を見直した。ステークホルダーを「株主・資本市場」「従業員」「顧客」「サプライヤー」「パートナー」「地球環境」の6つと位置付け、各ステークホルダーに関する重点テーマと目標、担当役員、KPI(重要業績評価指標)、26年度の目標値を一覧化したのだ。 アドバンテストは半導体検査装置のマーケットで世界シェア50%超を誇る。同社が提供する半導体検査装置の電力消費量を削減したり、検査効率を向上させたりすれば、取引先および環境に与える影響を軽減できる。そこで同社は以前から低消費電力設計を戦略に掲げ、新製品の環境アセスメントの結果がエコラベル基準の90点以上になるようグリーン設計を推進。装置の開発、製造、検査における温室効果ガス(GHG)の排出量削減に取り組む。 一方で、半導体関連産業につきまとうのがサプライチェーンの問題だ。コロナ禍では半導体不足が深刻化し、多くの産業に影響をもたらした。「誰もがこれまでサプライチェーン・マネジメントにおいて過ちを犯していたことに気づいた」とラフィーバは指摘する。 昨今はウクライナ情勢や中東情勢の緊迫化などで、地政学的リスクも高まるばかりだ。アドバンテストでは、「デザイン・フォー・サプライチェーン」を合言葉に、「100%自社生産」「EMS生産」「外部委託生産」の3種類の生産方式を効率的に使い分けることで有事に強いモノづくりの体制を構築している。さらに、米国、欧州、台湾、韓国など世界各地に製造拠点をもち、地域のサプライヤーから調達することで地政学的リスクの低減にも努めている。「重要な部品を供給できる企業が限られている場合には、十分な供給量を確保するために長期契約を用いたり、サプライヤー企業のCEOに会って両者の利益が一致していることを確認したりするなど、目に見えない部分での関係性の構築にも力を入れている」