【宝塚記念回顧】不確定な展開読み切ったブローザホーンと菅原明良騎手 “京都の道悪”という最後のピースがハマった一戦
道悪と緩急に阻まれたドウデュース
レース自体は京都の宝塚記念らしく、阪神ほど速くならず、実質スローに近かった。後半800mは11.4-11.7-11.3-11.5。坂の下りからペースチェンジし、ゴールまで良馬場レベルのラップが並んだ。道悪でこれほど速い上がりを後方から動いて差し切ったブローザホーンはもちろん、道悪を苦にしない馬でないと上位には来られない。スタミナ勝負でもあり、道悪の瞬発力という極めて珍しい適性が求められた。 2着ソールオリエンスは重馬場の皐月賞、スローのダービー、高速上がりにならない菊花賞以来の好走で条件さえ合えばGⅠでもやれる。中盤で行きっぷりが悪くなり、位置を下げる場面もあったがしぶとく伸びた。ちょっと好走条件が狭い個性派だが、それだけに付き合いやすい。 3着ベラジオオペラはソールオリエンスが勝利した皐月賞では崩れたが、重のスプリングSでハイペースを制しており、道悪適性があった。番手から抜け出した大阪杯で自信を深め、今回も同じように積極的な競馬を展開し、瞬発力勝負に位置取りで応じた。大阪杯で破ったローシャムパークにマークされ、スパートを待ちきれなかったのは痛かった。ブローザホーンと同じく3歳暮れから重賞で崩れておらず、この先、まだまだチャンスはある。母エアルーティーンはエアデジャヴーの牝系で、兄エアアンセムは7歳で函館記念を勝った。成長力がある。 4着プラダリアも重の京都大賞典を勝っており、時計のかかる冬の京都記念ではベラジオオペラを完封した。間違いなく適性の高い一頭だった。道悪を踏まえ早めに勝負に出た分、最後は甘くなってしまったが、状況的には戦略に誤りはなかった。GⅠを勝つには少しばかり底力が足りない印象もある。これだけ条件がそろったレースだけにそう感じざるを得ない。 1番人気ドウデュースは6着。有馬記念では迫力ある“まくり”を見せただけに、後方から動けず、内を回らないといけない状況になったのは道悪の影響だろう。勝ったブローザホーンは馬場の大外を通って、上がり34.0を叩き出したように、やはりペースチェンジと瞬発力が必要だった。ハーツクライ産駒らしく、そういった器用さ勝負では分が悪い。直線で伸びなかったわけではなく、道悪適性のほかに、緩急に対応できなかった面もある。一気にねじ伏せにかかるような荒っぽい立ち振る舞いで緩急を無力化する競馬が似合う。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳