自転車の「飲酒運転」「ながらスマホ」罰則強化…検挙されたら懲戒処分はあり得る?
●公務員の場合は?
ただし、以上述べたことは、あくまで民間企業の従業員の場合です。 これが公務員となると事情は異なってきます。公務員は行政法の基本原則上は全体の奉仕者という立場にあり、たとえ私生活上の不祥事であっても厳しく懲戒処分を受ける立場にあります。 特に自衛官や警察官ともなると、社会秩序や公共の安全に関わる職務上の地位にあるとみなされて、なおさら厳しい処分を受ける立場にあります。そのため私生活上の酒気帯び運転等であっても厳しく処分されることがむしろ通常です。 たとえば、国家公務員については、人事院が定めている「懲戒処分の指針」は、酒酔い運転は「免職または停職」、酒気帯び運転は「免職、停職または減給」と定めています。死傷させた場合はさらに処分が重くなり、酒酔い運転では「免職」一択です。 では、ながらスマホについてはどうかというと、確かに今年11月からは検挙された場合の刑事処分は厳しくなりますが、しかしそれでもまだ酒気帯び運転(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)や酒酔い運転(5年以下の懲役又は100万円以下の罰金)よりは軽い刑事処分です。 ですから、運送事業の運転などの業務に従事していない者ならば、私生活で「ながらスマホ」で検挙されたことを理由として懲戒処分を加えることは難しいのではないでしょうか。 もっとも、これは今後の我が国の交通事情や社会情勢をみてみないとなんとも言えない面もあります。仮に公務員がながらスマホで検挙された場合は、それだけでいきなり免職は厳しすぎるように思いますが、何らかの懲戒処分は有効と判断される余地があるといえるでしょう。 【取材協力弁護士】 今井 俊裕(いまい としひろ)弁護士 今井法律事務所 1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。