ROGUEギタリスト香川誠が語る解散の真相、再結成後に感じた素直な想い
ROGUEが愛されていたんだなというのがわかって、それに答えないといけない
DISTANCE / ROGUE 田家:2014年に発売になったROGUEの再結成アルバム『REAL AGAIN』から「DISTANCE」。詞が奥野さんで曲が西山さん。 香川:これはもう僕には絶対書けない歌詞だし、メロディも西山、ビートルズ好きだもんなっていう感じがするしっていう曲ですよね。 田家:奥野さんは車椅子になって、手はどうなんですか? 香川:手が動かせないんです。指も動かせないんですけど、右手の中指だけが手前に出ている形で固まっているんですよ。だから、装具をつけて、中指だけでパッドがいじれるんですよ。パソコンの画面が触れる、タッチできる。ソフトどんどんいれちゃって、ギターなんか俺より100倍上手いぐらいのギターで作るようなソフトで曲を書いているんです。中指で弾くと、アコースティックが弾いたようになるようなソフトとかいっぱい持っていて。 田家:それでもうわりと曲はたくさんお書きになっていた? 香川:5000曲ぐらいあるって言ってましたよ。 田家:えー!! 香川:ははははは。冗談でしょうけど(笑)。 田家:『REAL AGAIN』はその中から曲を選んだんでしょう。 香川:そうですね。自分の曲を入れたいなんて思ってないですもん。 田家:もはやね。 香川:もはや。もちろん何曲か入っていますけど、カラーとしては彩りとしては必要だから入れていますけど、奥野が歌いたいことだけでいいなと再結成のときは思っているので。 田家:普通のレコーディングでは考えられないことがいっぱいあるわけでしょう? 香川:これも偶然で、ちょうどGBGBをやる年ぐらいに高崎に大きなTAGOスタジオっていうのができて、ここがバリアフリーだったので。 田家:あそこバリアフリーなんだ。そういう状態でGBGBのライブが行われて、そういうイベントができたということがいろいろな意味が生まれるでしょうしね。 香川: ROGUEがホストバンドの形でいますけど、自分たちからやりたいと言ってないんですよ。有志の後輩たちの熱量がすごかったので。だから、奥野もROGUEがっていう言い方がいいのかな、愛されていたんだなというのがわかって、それに答えないといけないと言って。奥野も年々歌えるようになって初年度は7曲が精一杯で倒れちゃうって言っていたんだけど7年目で十何曲とか言い出したからあいつすげえなって思いましたよ。 田家:Disc6のDVDにはこのGBGBの様子が入っておりまして、ファイナルGBGB1日目と2日目で13曲入っていますもんね。 香川:2Days。あとはそれに収録されているライブハウスの先週言ったJammer’sとかも奥野がじゃんじゃん歌うって言って、わざわざ休憩コーナーを作ってるのに楽屋に戻るのが面倒だって言って、もっと歌うって言って歌うぐらいだから、やっぱり意欲が。これ以上動かないはずだったんでしょう?てものを動かしたりもするのも、僕らも見ちゃったので。 田家:動くんだ。 香川:腕上がってるじゃんとか、人はそういう目標って言うのかな、なんだろう、欲が勝つと奇跡って言い方は変ですけど、起こすのはあるなって彼を見ていて思いましたけどね。 田家:ヴォーカリストが車椅子のロック・バンドのライブ曲が20曲入っているライブ映像、これも世界では珍しいのではないかと思いますが。 香川:ちょっとやりすぎですよねー。 田家:やれるっていうことをみんなで確認したいなという、そういうディスクでもありますね。今日最後の曲は2016年に発売になった再結成後2枚目のアルバム『DESOLATION ANGELS』から奥野さん詞曲の「俺の空」。 俺の空 / ROGUE 田家:2週間の特集の最後の曲、2016年のアルバム『DESOLATION ANGELS』の中の「俺の空」。詞曲が奥野さん。 香川:奥野、最近YouTubeにじゃんじゃん動画をアップしているんですけど、自分でパソコンで作って変な動画とかをね。それが彼のソロ活動じゃないですか。彼がソロ活動で表現したい曲と、ROGUEという形になったときに歌いたいバラードって違うんだなって、これでわかるんですよね。彼はソロでこれをやってもいいと思っているんですよ。すごく小さい世界。自分と彼女。個人的なものなのに、あいつROGUEに持ってくるんですよね(笑)。 田家:それは歌っていることがメンバーに対しての気持ちでもあるんじゃないですか? 香川:どうなんでしょうね。そうだと気持ちが悪いですけど(笑)。 田家:いや(笑)。 香川:なぜバンドでこういうのをやりたがるのかなっていうのは、やって何年も経って聴くとわかりますよ。彼はROGUEというのはこういう曲をやっても大丈夫な曲。 田家:そういうロック・バンドなんだと。 香川:そうなんだと思いますよ。 田家:再結成って簡単に言っちゃいますけど、前の形と全然違うわけですもんね。バンドの名前もメンバーも同じなんだけども、再結成って言っていいのだろうかというぐらい。 香川:どうなんでしょう。不思議ですよね。だから、真似してみろって言って真似できるものでもないものを僕らは先輩たちをいっぱい見てきたわけじゃないですか。僕たちを慕ってくれてる後輩のバンドも群馬にもいるし、いろいろいますけど、さすがにここまでは真似しなくていいし、大変ですよ。 田家:でもやっていることの意味がすごくある。 香川:そうですよね。その再結成とかがなければ、僕は今ラジオのお仕事もさせてもらったりとかしますけど、それもないし。僕はたぶん職業として音楽の裏方をただ続けていたのかなとか、それはおもしろくなかっただろうなとも思うし。だから、みんなのおかげというか、バンドのおかげなのかなというのは。 田家:奥野さんもバンドがあるから、みんなの前で歌えたわけですし。 香川:バンドのエネルギーというのは、そういうものも持っていたんだなというのがわかりましたよ。 田家:なるほどね。このボックス・セット、『60 ALL TIME SELECTION』の60曲をこれがこんなふうに聴かれるといいなというのはありますか? 香川:ファンの人と一括りにしちゃうと、僕らがアマチュアの頃から知っている人も再結成から知った人も、こうやってラジオで聴いて知った人もいるので。その人たちに満遍なくどうぞっていうものなんてあるわけないんです。ただ、このボックスは僕らからそういう人全員に向けて、お礼なので。こんなことやってきましたと、これからも続くでしょうけど、こんなことをやってきたので1回ここで確認をしてくださいってことですかね。 田家:なるほどね。この中にある人間ドラマを感じてほしいというふうに思ったりもしますが、この先どうなるでしょうね。 香川:どうなんでしょう。奥野くんの体の不具合は治るわけがないものなので、彼のペースに合わせるしかなくてROGUEという形は。ただ、彼が歌いたいと言ったら、いつでも歌えるようにはしたいなとは思ってます。 田家:ぜひ新たな目で見届けてあげてください。ありがとうございました! 香川:ありがとうございました。 静かな伝説 / 竹内まりや 流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。 1つのバンドに才能のある人たちが何人か集まってくる。特にROGUEは奥野さんと香川さんという同じ群馬から上京してきた同い年の2人がそういう存在だったわけですね。そういう存在が上手く成り立つこともあれば、時にはぶつかりあって、張り合ってバンドが空中分解したりする。特にROGUEは西山さんも曲を書きましたし、本当に才能ある人たちが集まった、みんな若気の至りの塊だったわけで。それがどんなふうにダメになっていったのかということの1つの証言のインタビューにもなっているんじゃないでしょうか。でも、香川さんが車椅子だった奥野さんに対しての想い。ap bank フェスティバルの映像。それを僕は客席で見ていたわけですけど、香川さんはテレビで観て、あいつ歌えるようになったんだって知った。それまで歌えるようになっているということを彼は知らなかったんだな。つまり、それぐらい再結成を諦めていたんだとあらためて思ったりもしました。 「終わりのない歌」に対しての香川さんの気持ちも、とっても正直でしたね。同じように東京で戦っていると思った仲間があんなふうに弱音を吐かれたときに、お前そんな歌を歌うなよって思ったというのも正直なところだと思いますね。俺は違うぞっていうふうに突っ張ってしまった。でも、年が経って、年齢を重ねて大人になってあらためて聴いたとき、しかも再結成であの歌を歌ったときに本当にいい曲だと思った。弱さだとかいろいろな挫折を知ったから歌えること、わかることというのがたくさんあるんだろうなと思いました。ROGUEの武道館コンサート・タイトル、単独行動です。そのことの意味が僕はこのインタビューであらためて分かった気がしました。群馬三大バンドの中でなぜ彼らだけ異質だったのか。その答えが先週と今週のインタビューだったのではないでしょうか。 <INFORMATION> 田家秀樹 1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。 「J-POP LEGEND CAFE」 月 21:00-22:00 音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストにスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。 OFFICIAL WEBSITE : OFFICIAL Twitter :@fmcocolo765 OFFICIAL Facebook : @FMCOCOLO radikoなら、パソコン・スマートフォンでFM COCOLOが無料でクリアに聴けます! →
Rolling Stone Japan 編集部