宝くじ付き定期や社会貢献できる寄付型、熱い預金獲得競争…九州の地方銀行が金利以外で新たな工夫
九州の地方銀行が、預金の獲得に向けた取り組みを積極化させている。日本銀行の利上げに伴って企業や個人に貸し出す際の利ざやが拡大し、原資となる預金が必要となっているためだ。新たな預金プランや口座開設キャンペーンを相次いで展開するなど、競争が熱を帯び始めている。(中西瑛) 【表】変動型の住宅ローン金利0・625%に…福岡銀行・西日本シティ銀行・十八親和銀行が0・15%上げる
北九州銀行は20日、宝くじ付きの個人向け定期預金を始めると発表した。預入額100万円ごとにドリームジャンボ宝くじを年5枚、最長3年にわたって贈る。300万円以上の場合は金額に応じて枚数を上乗せする。12月2日から来年3月末まで受け付け、500億円の獲得を目標としている。
北九州銀として宝くじ付き定期預金を取り扱うのは約3年ぶりといい、平井芳直・営業統括部長は20日の記者会見で、「金利のある世界になり、預金の重要性が高まっている。預金額に応じてもらえる宝くじが増える楽しみがある商品だ」と強調した。
福岡銀行は今月、福岡県発祥で若者に人気のコーヒーショップ「NO COFFEE」と組み、新規の口座開設者に対して巾着などのグッズをプレゼントするキャンペーンを始めた。来年4月末まで行い、新社会人や大学の新入生らの取り込みを図る。
地銀の普通預金の金利は日銀のマイナス金利政策で年0・001%が続いていたが、今年3月のマイナス金利解除と7月の追加利上げ決定を踏まえて現在は多くの地銀が年0・1%に引き上げた。ただ、各行は更なる引き上げに否定的で、利上げによらない資金集めに注力している。
法人向けの預金プランを充実させたのは西日本シティ銀行や肥後銀行で、それぞれ今秋、寄付型の定期預金を始めた。企業側が預金を通じて社会貢献できる仕組みで、預入額に応じ、銀行が自己負担で子ども支援団体や環境保全団体などに寄付する。
金融環境の変化を踏まえて人事評価を見直す動きも出ており、ある地銀は今年4月、営業店や行員の評価項目に、預金の獲得状況を加えた。担当者は「預金は管理コストもかかるため低金利下では積極的に獲得してこなかったが、収益を生むようになって取りにいく姿勢に見直された」と明かす。預金獲得を巡る各行の工夫は今後も続きそうだ。