恐竜滅亡後の地球で「超巨大化」した新生代爬虫類…その「衝撃的な容姿」を公開しよう
新生代は、今から約6600万年前に始まって、現在まで続く、顕生代の区分です。古生代や中生代と比べると、圧倒的に短い期間ですが、地層に残るさまざまな「情報」は、新しい時代ほど詳しく、多く、残っています。つまり、「密度の濃い情報」という視点でいえば、新生代はとても「豊富な時代」です。 【画像】大絶滅を生き延びた爬虫類…こちらが、コリストデラと巨大ヘビ マンモスやサーベルタイガーなど、多くの哺乳類が登場した時代ですが、もちろん、この時代に登場した動物群のすべてが、子孫を残せたわけではありません。ある期間だけ栄え、そしてグループ丸ごと姿を消したものもいます。 そこで、好評のシリーズ『生命の大進化40億年史』の「新生代編」より、この時代の特徴的な生物種をご紹介していきましょう。今回は、大絶滅を生き延びた爬虫類をお届けします。 *本記事は、ブルーバックス『カラー図説 生命の大進化40億年史 新生代編 哺乳類の時代ーー多様化、氷河の時代、そして人類の誕生』より、内容を再構成・再編集してお届けします。
ワニに似た、でもワニではない爬虫類
中生代ジュラ紀に登場した淡たん水すい棲せいの爬虫類(はちゅうるい)に、「コリストデ類」と呼ばれるものたちがいた。 見すると、その姿はワニに似ている。すなわち、吻部(ふんぶ)の長い頭部をもち、四肢は短く、尾は長い。そして、ワニのように淡水に暮らす。 ただし、あくまでも「ワニに似ている」というだけで、コリストデラ類とワニ類は別のグループだ。「わかりやすいちがい」は、二つ。一つは、コリストデラ類の後頭部を見ると、その形状がハート型になっているという点だ。もう一つは、上顎の裏、口蓋に細かな歯が並んでいるという点だ。これらは、ワニ類には見ることができない。 そして、神奈川県立生命の星・地球博物館の松本涼子とユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(イギリス)のS・E・エヴァンスが2010年にまとめた研究によれば、「コリストデラ類の多くは温帯域に暮らしていた」という点も、ワニ類との大きなちがいの一つ。熱帯域を好むワニ類に対して、コリストデラ類はやや涼しい環境を好んでいたようだ。 そんなコリストデラ類は、白亜紀末の大量絶滅事件を乗り越えて、新生代へと命脈を残した。 暁新世のコリストデラ類から「シモエドサウルス(Simoedosaurus)」を紹介したい。ヨーロッパを分布域とし、全長は最大で5メートルに達した大型種である。このサイズは、現在のアメリカに生息するアメリカアリゲータ(Alligator mississippiensis)と同等以上だ。その姿は典型的なコリストデラ類といえる。 すなわち、吻部が長く、後頭部はハート型、そして口蓋にはびっしりと細かな歯が並ぶ。 2015年に松本とエヴァンスが発表した研究によると、この口蓋の歯は喉に近いものほど喉の方向へ向いており、すなわち、口を「あぐあぐ」と開閉することで、食物を口内の奥へと送り込む役割をになった可能性があるという。また、近縁種であっても口蓋の歯の形状が異なるため、何らかの棲み分けを行っていたともみられている。 コリストデラ類は暁新世以降も種を残し、今のところ新第三紀からも化石が発見されている。なかなか“長命”なグループだったようだ。シモエドサウルスの特徴的な背面、吻部先端、細かな歯といった頭骨化石の写真を『生命の大進化40億年史 新生代編』に掲載しているので、ぜひご覧いただきたい。 さて、中生代に登場したヘビ類も、恐竜類の絶滅を待っていたかのように、暁新世に巨大化を遂げた。