「クマの出る場所に住むな」 抗議の声に秋田の地元住民が絶句「そんなこと言われても…」
捕獲・駆除を巡る一連の対応に、秋田県庁や秋田市役所には抗議の声が殺到
秋田市内のスーパーに侵入し、3日間にわたり立てこもったクマの報道が波紋を呼んでいる。クマは侵入から2日後の今月2日に捕獲・駆除されたが、一連の対応を巡り、秋田県庁や秋田市役所には抗議の声が殺到している。中には「クマの出る場所に住むな」「クマが出るようなところに住んでる方にも責任がある」といった、地元住民を非難する声も……。現地の人々は県外から寄せられる抗議の声に何を思うのか。現場となったスーパーを日常的に利用しているという住民に話を聞いた。 【写真】登山道で戦慄…クマに襲われ八つ裂きとなった動物の一部 先月30日午前6時過ぎ、秋田市土崎港近くのスーパー「いとく」土崎みなと店の店内に体長約1メートルのツキノワグマが侵入。従業員の男性が頭や顔をかまれたり、ひっかかれるなどして軽傷を負った。クマはその後、3日間にわたって店内に立てこもり、今月2日になって箱わなで捕獲・駆除された。 県の担当者は、取材に「2日の夕方までで電話が14件、メールが3件届いております。電話の半分の意見が『クマは殺さないでほしい』といった、処分に反対のご意見でした。このような意見は神奈川県や群馬県など県外の都市部の方からいただいておりました」と回答。秋田市にも40件以上の問い合わせがあったといい、市の担当者は「8~9割の方から『山に返せ』『殺すのは非道だ』など、なかなか厳しいお言葉をいただいています」と明かした。 現場となったスーパーは、秋田駅から約8キロの距離に位置し、道の駅などの施設がある土崎港から徒歩5分ほどの場所。店舗のすぐ近隣には秋田県警臨港警察署があり、周辺はJR土崎駅やフェリーの発着所、飲食店やホテルなどが立ち並ぶ市街地だ。当該スーパーを日常的に利用していたという60代の女性は「クマの目撃情報があって以降、地元の小学校は付き添い登校となっていますが、いざクマが現れたら大人が付き添っていても何の意味もない。市街地に出たクマは一刻も早く駆除してもらわないと、安心して生活ができない」と訴える。 一方、SNS上では「毎日クマの目撃情報があるなんて、そんなとこに住むなよ」「クマのすみかを奪ったのは人間なんだから、人間が出て行けばいい」という、地域住民に非があるかのような声も上がっている。 こうした声があることについて、女性は「えっ……そんなこと言われても……」と絶句。「子どもが生まれたときに、汗水垂らして必死に建てた家。今さら出て行けと言われてもどこへ行けばいいのか。それに、人がいなくなっちゃったら、それこそクマの生息域が広がる一方じゃないんですか?」と疑問を語る。現場から徒歩5分ほどの位置にあるランドマーク「ポートタワー セリオン」の建設に携わったという70代の男性は、「安全圏から石を投げてるだけ。自分の気に食わないことやたたけることがあれば何でもいいんだろ」と意に介さない。 秋田市では今年、市内の小中学校に通う生徒全員にクマ鈴を貸し出しを実施。市をあげて本腰を入れた対策を行っているが、もはや県内のどこにいてもクマの恐怖にさらされているという状況が続いている。前出の女性は「過疎化は止まらず、話題になるのはクマばかり。いよいよ本当に、いいところのない県になってしまいました。若い人は黙っていてもみんな東京に出て行く。心配しなくても、そのうち本当にクマだけの県になりますよ」と自嘲気味に語る。被害地域の人間を切り捨てることのない、冷静な議論が求められている。
ENCOUNT編集部