減塩だけじゃない! 腎臓を保護するDASH食とは?(専門家が監修)
ヒトの寿命を決めるといわれている腎臓。血液を濾過して尿を作ったり、体内の水分量を調整するほか、造血作用、血圧調整、ホルモン分泌と、その機能は多岐にわたる。いわば全身の健康の功労者である腎臓。ケアするには減塩のイメージが強いが今回紹介するのはDASH食という食事法だ。多様な栄養素を摂取して腎機能を健やかに維持しよう。[取材協力/川村哲也(東京慈恵会医科大学客員教授)]
教えてくれた人:川村哲也さん
かわむら・てつや/腎臓専門医。東京慈恵会医科大学客員教授、同腎臓・高血圧内科客員診療医長。腎臓病の臨床と研究に長年携わるほか、患者向け「腎臓病教室」を開くなど腎臓病の正しい知識の啓蒙に努める。医学博士。
高血圧を改善し腎臓を保護するDASH食
腎臓の宿敵は、高血圧。腎臓の基本ユニット・ネフロンの糸球体は毛細血管の固まりなので、血圧が高くなりすぎるとその機能が妨げられる。 高血圧対策といえば、何より減塩が大切。それに加えて、日本と同じく高血圧大国であるアメリカで推奨されているのが「DASH(ダッシュ)食」だ。 ◎DASHとは? Dietary Approaches to Stop Hypertension→高血圧を防ぐ食事法 「DASH食のポイントは、野菜、海藻、大豆食品などから、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル、食物繊維、タンパク質の摂取を増やすこと。高血圧を改善して腎臓を保護します」(腎臓専門医の川村哲也先生) DASH食が重視する栄養素が、なぜ高血圧と腎臓に良いのか。一つひとつ解説してみよう。 初めはカリウム。カリウムとナトリウム(塩分)には相互作用があり、カリウム摂取を増やすと、血圧を上げやすいナトリウムの排泄が促されやすくなる。 次はカルシウム。カルシウムは、飽食といわれて久しい日本人に、長年不足し続けているミネラル。骨の材料という側面ばかりにスポットが当たっているが、実はカルシウムが足りないと血管が収縮しやすくなり、血圧がアップしやすいのだ。カルシウムは血管を縮める交感神経の興奮を抑えて、血管を広げて血圧を下げてくれる。 続いて登場はマグネシウム。カルシウムと対となって働くミネラルであり、カルシウム同様に日本人には欠乏しやすい。マグネシウムは、カルシウムの働きを調整して血管のしなやかさを保ち、血圧の過度な上昇を抑える。 そして食物繊維。食物繊維に期待されているのは、余分な塩分や脂質などを絡め取り、その排泄を促してくれる働き。それにより高血圧、さらには腎臓の働きを邪魔する動脈硬化が防げる。 最後はタンパク質。タンパク質は筋肉を作っているだけではない。血管もまたタンパク質メイド。タンパク質の摂取が不十分だと、高血圧で血管が弱く脆くなりやすく、腎機能を一層衰えやすくする。