日本のオーバーツーリズム対策はどうなっているのか? その本質と取り組みを、観光庁の参事官に聞いてきた
これまでの道のり、今後の取り組み
国の施策からも、オーバーツーリズム対策が、観光立国を目指す日本において喫緊の課題となっていることがわかる。アフターコロナを機に急増した観光需要に対し、2023年夏に岸田元首相の指示のもと、関係省庁が横断して実効性の高いオーバーツーリズム対策を検討する会合が開かれた。 この会合は、観光庁が事務局を務め、議長は観光庁長官、構成員に内閣官房、警察庁、デジタル庁、文化庁、環境省、国交省からは鉄道局長、自動車局長、海事局長、港湾局長、航空局長らが参加。省庁横断での議論を経て、2023年10月に各省庁のトップである大臣・長官が集う観光立国推進閣僚会議で対策パッケージが決定された。 対策パッケージは、「観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応」、「地方部の観光地の魅力向上などを通じた地方部への誘客促進」、「地域住民と協働した観光振興」を3本柱としている。省庁横断の会合で、環境省を中心とした自然公園法に基づく入域規制やガイド同伴の義務化、警察庁を中心に防犯カメラの設置、交通規制が話し合われるなど、省庁の垣根を超えてさまざまな角度から指針が示されたことは大きな転機と言えるだろう。 直近でも2024年度(令和6年度)補正予算で「オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする訪日外国人受入環境整備に向けた緊急整備」として、158億2000万円が計上されている。これは、2025年度(令和7年度)予算案を含めた総額1081億2000万円の約15%にあたる大きな配分だ。 主に受け入れ環境整備・増強、需要管理、需要の分散・平準化、マナー違反の防止・抑制、地域住民と協働した観光振興の取り組みに関する間接補助事業で、その目的について観光庁は「観光客の受け入れと住民の生活の質を確保しつつ、持続可能な観光地域づくりを実現するためには、地域自身があるべき姿を描き、実情に応じた具体策を講じることが有効である」と示している。