「生稲晃子氏、靖国参拝」報道で反日感情を沸騰させた韓国、誤報アナウンス後も容易に消えない日本への不信感
■ 「靖国参拝」の誤報が招いた亀裂 ところが追悼式を終えた25日、共同通信は「22年の生稲政務官の靖国神社参拝は誤報だった」と謝罪した。韓国メディアと政府が一番問題と指摘した生稲氏の靖国参拝履歴が誤報だと判明されたにもかかわらず、韓国政府は「不参加は、日本側の追悼式の内容などの追悼式関連事項が当初の佐渡鉱山登録時の合意水準に達していなかったため」と説明した。 共同通信の誤報を引用して「生稲氏の出席は徴用工遺族を侮辱する行為」と怒りを爆発させた韓国メディアも、「本質は日本政府の不正義と韓国政府の無能にある」と開き直った。 一方、野党と市民団体は尹錫悦政権の対日屈辱外交を批判する集会を開くなど、今回の追悼式を巡る一件は、日本と尹錫悦政権に反発する世論を一気に醸成する結果となった。 特に懸念されるのは日韓関係の大きな障害になりかねない点だ。2015年の軍艦島の世界遺産登録の際にも韓国人には「日本に裏切られた」という認識がある。今回の事態はその二の舞いと受け止められている。 『聯合ニュース』は「軍艦島に続き、またも日本にだまされた」と記事で以下のように嘆いた。 「2015年、軍艦島の世界遺産登録当時も、日本政府は朝鮮人強制労働を含む『全体歴史』(full history)を知らせると言ったが、真っ赤な嘘だった。犠牲者を称えるための情報センターの設置を約束したにもかかわらず、これを現地ではなく東京に作ったうえ、2020年3月に開館した東京遺産情報センターには、朝鮮人差別や人権侵害の事実を省くなど歴史を歪曲した」 「韓国政府は軍艦島に続き、またも不意打ちを食らうことになった。日本の欺瞞も痛嘆すべきことだが、韓国政府が見せてくれた無気力な姿は惨憺たるものだ」
■ 支持率低迷に追い打ち 主要新聞は「対日屈辱外交」「予告された惨事」などの厳しい表現で事態を批判しているが、そうした中にあって、これまで尹錫悦政権の日韓協力基調に同調してきた3大保守紙までもがかなり鋭い批判を出したことも注目すべきだろう。 『朝鮮日報』の社説は「韓国政府は政治的に重荷になる過去史問題で日本への配慮を示した。ところが日本はそれに応えるような措置を取っていない」とし、「こんな状態で未来のための韓日関係をどうやって切り開いていけるだろうか」と非難した。 『中央日報』の社説は、「日本が韓日対立縫合の場に極右政治家を代表に出し不完全な式となった」としながらも、「韓国政府は『外交惨事』という批判の声を肝に銘じてほしい」と話した。 『東亜日報』の社説は、「信義のない日本の不意打ち外交と、相手の善意に頼った無気力な韓国外交では、両国関係が一歩も進むことが難しいという事実を、佐渡金山追悼式の跛行が示している」と指摘した。 与党「国民の力」でも今回の事態を重く受け止めなければならないという反省が出ている。秋慶鎬(チュ・ギョンホ)院内代表は「このような結果が韓国外交当局の安易な態度のためではないかという謙虚な反省と点検も必要だ」と指摘し、重鎮の尹相鉉(ユン・サンヒョン)議員は「日本外務省とこのような協議しかできないというのが大きな問題だ。野党の立場では(外交部長官の)謝罪要求をするに値する」と外交部の無力な態度を批判した。 大統領の支持率が歴代最低という風前の灯のような状態にあるだけに、「いつまで日本に譲歩ばかりすることはできない」という意思が与党側の言葉から読み込まれる。 尹錫悦大統領の支持率は現在、20%前後に低迷している。国会を掌握した野党は、大統領弾劾を主張し、街頭で国民の賛同を集めようと活発に動いている。もし2016年のようにろうそく集会が国民的支持を得ることになれば、野党が主張するように、尹大統領は任期途中で大統領の座から降りなければならないかもしれない。 日韓両政府が今回の事態をうまく収拾できなければ、日韓国交正常化60周年を迎える来年は、日韓関係が「尹政権以前」へ逆戻りするかもしれない。
李 正宣