「女流プロ」が「プロ棋士」を目指すってどういうこと? 里見香奈さんが奨励会三段に
将棋の女流プロ棋士、里見香奈女流三冠(21)が昨年12月23日、プロ棋士の養成機関である「奨励会」の対局で勝利し、規定の昇段条件を達成。女性として初めて奨励会三段になりました。里見さんは4月から奨励会三段リーグに参加し、女性初の「四段=プロ棋士」を目指します。あれ?「女流プロ棋士なのにプロ棋士を目指す」とはどういうことなのでしょうか?
「プロ棋戦」と「女流プロ棋戦」
まずプロの将棋はプロ棋士が参加する棋戦(名人戦や竜王戦など7大タイトル戦が中心)と女流プロ棋士が参加する棋戦(女流名人戦など6女流タイトル戦が中心)が別々に分かれています。 女流プロ棋戦は女性だけが参加し、現在49人の女流プロが在籍しています。現在の制度では26歳以下のアマチュア女性が「研修会」という組織に参加し、規定の成績を収めて女流プロになるのが一般的です。里見さんは2004年10月、中学1年生の若さで女流プロになりました。プロ入り後の活躍も目覚ましく、2008年には初タイトル獲得(倉敷藤花位)、今年には女流名人位などを含む史上初の女流五冠を達成。相手の王将をとらえる終盤能力の高さに定評があり、島根県出身であることから「出雲のイナズマ」の異名を持ちます。
「奨励会」に入ることが必須
一方、プロ棋士には男女の区別はありません。しかし、過去に女性がプロ棋士になった例はなく、これまでは事実上「プロ棋士=男性棋士」を意味していました。プロ棋士になるには通常、奨励会試験に合格し、奨励会に入らなくてはなりません。奨励会は三段から6級で構成されており、二段までは規定の成績をあげれば昇級・昇段できます。三段になると半年単位で行うリーグ戦に参加し、上位2名に入ると四段昇段、つまりプロ棋士になります。(3位を二回取れば昇段資格を得るという制度もある) 女性の棋士にも奨励会受験資格があり、現在奨励会(東西在籍数155人)には里見さんのほか、加藤桃子1級(前女流王座位)など6人が在籍しています。また女流プロのタイトル保持者などはプロ棋士の一部棋戦に女流枠から参加することができます。女流プロでも予選から連勝し続ければ、優勝賞金が最も高いタイトル戦「竜王位」などに挑戦することは可能です。しかし、将棋界で最も歴史と格式のある「名人位」に挑戦するための順位戦参加資格は女流プロにはなく、プロ棋士でなければ「名人」になることはできません。