イラク戦の鍵を握る本田圭佑のインサイドハーフ起用は成功するか?
ハリルホジッチ監督に、本田を中盤で起用する可能性を聞いたことがある。返ってきた答えは「不可能なミッション」だった。練習で試したことのない布陣は実戦でも採用できない、がその理由だった。 先月28日から海外組だけを対象に、今月5日からは国内組も合流して計10日間行われた日本代表合宿でも、ある選手によれば本田を中盤に置いた練習は「一度もなかった」という。 シリア戦における本田のインサイドハーフ起用は、まさにぶっつけ本番だった。ハリルホジッチ監督が信念を曲げてまで本田を右ウイングから移した背景には、まだ診断結果の出ていなかった香川が重症だと見越したうえで、イラク戦へ向けて急きょ講じたリスクマネジメントがあったはずだ。 果たして、本田が右のインサイドハーフに入った後半18分以降は、直前に同点に追いついていた日本の攻撃がさらに活性化した。象徴的な場面は32分。センターサークル付近にいた本田が、左タッチライン際のFW乾貴士(エイバル)へ放った40メートル近いサイドチェンジのパスとなる。 華麗なトラップで一瞬にして相手をかわし、シュートにまでもちこんだ乾が、右インサイドハーフに左利きの本田が入ったメリットをこう指摘する。 「右利きだとなかなかああいうボールを出せないけど、左利きだと左を見やすくなるので。もちろんボールを収めてタメを作れるし、ゲームを落ち着かせてもくれる。(本田)圭佑君があの位置に入ることで、特に左のワイドの選手は楽になると思う」 左利きの選手が右サイドに入れば、視野を広く保てる分だけ次のプレーの選択肢が増える。しかも、本田はザックジャパンにおいて、不動のトップ下を担っていた。守備面を含めてインサイドハーフとは役割が異なるものの、中盤でのプレーに対しては一日の長がある。 アルベルト・ザッケローニ元監督が香川ではなく本田をトップ下で重用した理由に、フィジカルの強さを生かした、卓越したボールキープ力がある。インサイドハーフでもストロングポイントは十分に生きるなかで、キャプテンを務めたDF吉田麻也(サウサンプトン)は別の視点で本田を見ている。 「シリア戦に限って言えば、インサイドですごくよさが出たと思う。ただ、もっと押し込まれる時間帯ではサイドで張ってくれて、そこでボールをキープしてくれることもできるので。どちらがいい、悪いというのはシリア戦だけでは言い切れないと思う」