平安時代、「娘」は「人」として扱われていた?それとも錬金術のための「道具」だった?【NHK大河『光る君へ』#26】|
倫子の母としての強さ。娘の宿命を受け入れ、共に背負う意志を表明
倫子(黒木華)は貴族社会の規範やルールを理解しているものの、父・雅信(益岡徹)から何かを無理強いされたり、詮子のように出世のために利用されたりしたことはなく、当時の貴族女性としてはのびのびと育ってきました。 道長は彰子の入内をまもなくして決めますが、倫子は自身の生い立ちも関係しているのか母として娘の宿命を嘆き、我が家にこれまでどおり置いておきたいと考えます。 道長から「続く天変地異を鎮め世の安寧を保つためには彰子の入内しかない」と聞かされると、彼が正気であるのか疑いつつも、反対します。 「嫌でございます。あの子には 優しい婿をもらい 穏やかに この屋敷で暮らしてもらいたいと思っております」 母親が娘に願うことの根本はいつの時代も同じなのだと考えられます。倫子は彰子に女子(おなご)として高い地位を得ることよりも、朝廷のために犠牲になることよりも、将来的に優しい婿と一緒に穏やかに暮らしてもらうことを望んでいます。 現代でも娘が女として高い地位を得ることよりも、穏やかに暮らすことを望んでいる母親は多いと思われます。どの時代においても母親の心は同じなのかもしれません。 しかし、倫子は母・穆子(石野真子)から助言を受け、道長の左大臣としての覚悟を知る中で、自身も肝を据え、娘を入内させることに同意します。倫子の「気弱なあの子が 力強き后となれるよう私も命を懸けまする」という台詞には、平安時代という厳しい時代を生き抜いてきた女としての強さ、そして母としての強さが表れています。 時代に翻弄されるのは弱き女です。抵抗できない女たちは人知れず涙を流すこともあります。しかし、彼女たちは自分の宿命を受け入れ、それを果たす中で男以上に強く、たくましくなることさえあるのです。 彰子は親から愛情を注がれて育った姫君です。また、彼女は道長が幼い頃のようにおっとりしていて、出世欲もなさそうで、純粋な印象を受けます。道長と倫子の娘である彰子が一条天皇(塩野瑛久)とどのような関係を築き上げていくのだろうか。