激減「水ぼうそう」ワクチン普及で劇的変化、感染者は帯状疱疹リスク持ち続けることに…
子供が罹患(りかん)しやすい感染症の一つである「水痘(水ぼうそう)」のワクチン定期接種が始まってから10年が経過した。感染力が強く、かつては「子供は必ずかかる」との認識もあったが、定期接種によって患者数は激減。定期化前は年間約100万人と推計されていたが、数万人にまで減ったとみられる。同じウイルスが引き起こす帯状疱疹(たいじょうほうしん)の抑制にもつながるといい、専門家は「幼少期の接種をしっかり続けていくことが大切だ」と話している。 【グラフでみる】水痘ワクチンの定期接種化で感染者は激減している 水痘は発熱のほか、かさぶたとなる発疹を生じる感染症。新型コロナウイルスや季節性インフルエンザと同じく感染症法上の5類に位置づけられている。冬から春にかけて流行し、空気や飛沫(ひまつ)で感染が拡大。1~4歳の患者が多く、90%以上の人が10歳までの間に発症するとされる。 重症化するケースもあり、効果的な予防策が求められる中、大阪大学微生物病研究所(大阪府吹田市)の高橋理明(みちあき)氏が水痘ワクチンを開発。国内では昭和61年から、1歳以上を対象とした任意接種が始まったが、高額な接種費用などがネックとなり、接種率は低調なまま推移した。 定期接種が開始されたのは平成26年10月。生後12カ月から生後36カ月までの幼児を対象に、2回の接種を公費負担で行うようになったことで接種率が上がり、それに伴って感染者数も減少した。 国立感染症研究所によると、水痘患者は全国で指定された約3千の小児科医院からの「定点報告」で把握している。定期化前は15万~25万人で推移しており、実患者数は100万人ほどと推計されていた。 しかし、27年には定点報告の患者数は約7万7千人と激減。以降も減少傾向は続き、令和4年には約1万2千人となった。 近畿大の大塚篤司教授(皮膚科学)は、「ウイルスの感染力の強さからすると、ワクチンを打たなければ、ほぼ全員が感染すると言ってもよい」と指摘。 重症化すれば子供に後遺症が出ることもあるため、「幼少期にきちんとワクチンを打つことが発症を抑えることにつながるため重要だ」と話している。