「こんなもん話になるか!」…「浪速のモーツァルト」キダ・タローさんが見せていた凄まじい「茶番力」と見事な「キレ芸」
築き上げた「唯一無二のポジション」
音楽に関するコメントをしっかり残しつつ、収録する側の都合に合わせ、作曲家としての信頼が崩れかねない事実さえも笑いに変える――。こういった対応力があったからこそ、キダさんは関西のバラエティ番組で広く知られるようになり、唯一無二のポジションを築き上げることができたのではないか。 キダさんは死去の半年前に「ユニクロ心斎橋」の店内ソングを手がけるなど、最晩年まで作曲家として活動を続けた。また生涯最後のラジオ出演は、かつて「探偵!ナイトスクープ」で共演した北野誠さんの番組「北野誠のズバリ」(名古屋・CBC、3月20日放送分)、最後のテレビ出演は「探偵!ナイトスクープ」4月19日放送分(3月29日収録)であった。 振り返るとキダさんは、音楽家としてとしてインプット・アウトプットにすぐれ、「浪速のモーツァルト」として関西で地盤を築いた。決して作曲家・音楽家の軸からズレることなく、テレビ・ラジオで「作曲家兼・おもろいおっさん」であり続けた。 60年にも及ぶ芸能活動をまっとうしたキダさんに改めて敬意を抱きつつ、年末年始はゆっくりと、数々の「キダ・メロディー」の魅力に触れてみたいものだ。改めてご冥福をお祈りしたい。
宮武 和多哉(ライター)