「こんなもん話になるか!」…「浪速のモーツァルト」キダ・タローさんが見せていた凄まじい「茶番力」と見事な「キレ芸」
バラエティでのスゴい「茶番力」
キダさんは作曲家としての本分を守りつつ、テレビでもそのトークスキルを存分に活かした。テレビでは「浪速のモーツァルト」という愛称に違わず独自のスーツを着こなし、関西特有のバラエティ番組の“ベタベタ”な流れに乗れる瞬発力を持ち合わせていたのだ。 中でも、1989年4月8日放送に放送された「探偵!ナイトスクープ」(ABC)で、北野誠探偵(レポーター)と繰り広げた「茶番劇」は、特筆すべきものだ。 「大阪府・岸和田駅前に音痴な信号機がある」という情報をもとに現地に向かい、不具合で少しズレた音を出す信号機の前で「審査委員長」のたすきをかけて座り、「半音の1/40くらいの細かい音の違いかもしれない」「聞き分けるために電子オルガンを持ってきた」と、いかにも微々たる音の違いであるかのような“前振り”を丁寧に連発。 しかし、実際に信号機から流れる「通りゃんせ」電子音は軽く3~4度はズレており、度を超えた“音痴”ぶりに、態度を一変させて「こんなもん話になるか!」「アホ!」と、信号機をしばき倒す…。 多くの人々は、「茶番」に気づいているだろう。相手は信号機なので、この撮影の間に何度も鳴動しているはず。にもかかわらず、初めて聞いたかのようなリアクションを取っている。何なら、北野さんとキダさんが呼吸を合わせ、次の信号が鳴るまでにトークを収めようとしていた気配すら伺えるのだ。 また1994年6月24日の同番組では、「リレハンメルオリンピックでキダ氏の代表作「アホの坂田」のメロディーが客席から流れていた」という情報から、この楽曲が世界的に有名な民謡「メキシカンハットダンス」の流用(パクリ)、という事実が判明したこともあった。 コンプライアンスに厳しい今なら直ちに炎上しそうな案件ではあるが、実際には民謡に著作権がなく、法的な問題がない旨を粛々と説明すればよいだけの話だ。 しかしキダさんは、あえて「パクリではなく引用、オマージュ」「パクリといえば、誰も知らない曲を選び、似せて書くこと。曲そのものの引用はパクリでもなんでもない。俺の人生じゃ!」と、目が点になるような屁理屈、バラエティとしては100点満点のキレ芸で対応している。