ペルーに中国主導の大型港が開港、独占運営権認められる…米国側は軍事利用を警戒「間違いない」
【リマ=大月美佳、吉永亜希子】南米ペルーの中部チャンカイで14日、中国が建設を主導する大型港が開港した。巨大経済圏構想「一帯一路」の目玉事業で、南米とアジアを直接結ぶ地域のハブ港となる。中国は港を足がかりに中南米地域で影響力をさらに強める構えで、米国は港の軍事利用を警戒している。 【表】一目でわかる…中国共産党の権威「巨大化」
「中国とペルーを含む太平洋沿岸経済を発展させ、それが中南米・カリブ諸国の幸福の道となろう」
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するためペルー入りした中国の習近平(シージンピン)国家主席は14日、開港式典にオンラインで参加し、同港がもたらす恩恵を強調した。
港は2021年に着工し、事業費13億ドルのうち中国の国有海運大手「中国遠洋運輸(コスコ)」が6割を負担した。ペルー議会はコスコに港の独占運営権を認めており、コスコが中南米で運営する初めての港となる。港の水深は中南米で最も深い17・8メートル。世界最大級のコンテナ船も寄港でき、貨物取扱量は首都リマ近郊のカヤオ港と合わせると、南米最大規模となる。
チャンカイ港から太平洋を横断して中国に直行するルートは、メキシコや米国を経由する従来航路に比べ、輸送時間を10日短縮できる。地元でも経済効果への期待は高く、ペルー政府はチャンカイ港が国内総生産(GDP)の1・8%に相当する年間45億ドルを生むと試算する。
港は周辺国からの利用も見込む。中国にとって、電気自動車(EV)に欠かせないリチウムイオン電池のためのリチウムや鉄鉱石、銅などの資源の輸入に使われる見通しで、米欧などとの経済安全保障上の対立を抱える中、重要度は高い。
中南米地域にとっても、巨大市場である中国との通商分野での関係強化は不可欠だ。ペルーの最大貿易国は2014年以降、米国から中国に変わり、今や貿易総額の約3割が中国との取引だ。中南米・カリブ地域全体では23年、中国との貿易額が3441億ドルになり、03年の約17倍に急増した。一帯一路構想には、中南米20か国のうち14か国が参加しており、中国はさらに増やしたい考えだ。
ただ、米国は、港の運用に警戒感を強めている。中南米を担う米南方軍司令官だったローラ・リチャードソン氏は今月7日の退任を前に、英紙フィナンシャル・タイムズに対し、港を中国海軍が活用するのは「間違いない」と語った。米国陸軍戦略大・戦略研究所のエバン・エリス教授は、米中間で軍事的な緊張が将来高まる場合、中国海軍が軍艦を入港させるほか、部隊を支援する資材を保管する可能性を指摘している。