EVファンは熱視線? 駐車場で発電「ソーラーカーポート」、導入メリットと大注意点とは
余った電力も有効活用
設置のメリットはいくつかあり、持続可能エネルギーの活用に参加しながらある程度の実利も狙える。 まず、ソーラーカーポートは太陽発電によって得られた電力を駐車場で活用するための設備であり、大前提としてEVやPHVなど外部充電の可能な車を所有するのが望ましい。 EVやPHVに充電するための電気代を節約できるとともに、昼間に発電した電力を充電池にためておけば夜間の充電にも活用できる。燃料費の高騰や円安の影響で発電に必要なコストが上昇しており、電気代も高くなるなかで、設置は日常的な助けとなる。 また発電した電力は車に対してだけではなく隣接する施設でも利用でき、再生可能エネルギーを自家消費しやすい点もメリットのひとつだ。補助金の要件にも自家消費率が挙げられており、個人宅や商業施設などで消費される電力の一部を太陽光発電にすることでCO2削減への貢献ができる。 駐車場は立体駐車場を除けば開放型の土地となっているため、土地の余った面積を太陽光発電に活用できれば、昨今社会問題となっている 「太陽光発電のための土地確保」 も少なくできるはずだ。さらに発電した電力が余ったときには電力会社などへ売却することも可能であり、売電収入も期待できる。
回収期間長めの注意点
ソーラーカーポートの導入にはさまざまなメリットが期待できるが、その導入にあたってはいくつか注意点もある。導入には駐車場に太陽光発電設備を始めとしたさまざまな機器を設置することとなり、維持費用は大きなものとなる。 駐車場の土地に加えて ・太陽光パネル ・屋根 ・蓄電池 ・給電設備 などが必要であり、最低限の設備でも数百万円規模となるため、初期費用は大きい。商業施設や工場であれば事業の一部とすることもできるが、個人宅への設置については費用負担が大きいものだ。 もちろん太陽光発電による電気代の節約や売電収入によって次第に初期費用を回収できるが、導入コストを全額賄うにはかなりの期間が必要だ。 またソーラーカーポートは建築基準上で建築物に該当しており、設置には建築基準法にのっとった対応や設置後の管理が必須となる。野立ての太陽光発電設備は建築物とはみなされていないため、管理が比較的簡単だが、ソーラーカーポートは構造設計や建ぺい率なども関係するため、個人で設置などは難しいかもしれない。さらに、保守点検として定期的なコストも発生するため、通常の駐車場と違い管理も大変だ。 なお、売電収入については現在年々買い取り価格が低下傾向にあり、売電収入は以前よりも減少している。ソーラーカーポートなど小規模の発電(10kWh以下)に対する買い取り価格は2024年で 「1kWhあたり16円」 となっており、10年前と比べて半減している。設置後10年間は売電価格はキープされる制度のためすぐには年々安くなることはないが、10年を超えるとさらに売電収入が低下する。 ソーラーカーポートのような3~5kWh程度の発電量の施設では、年間の平均的な発電量と売電の買い取り価格から推定して計算すると年間3万~5万円程度の売電収入は期待できる。だが初期費用を回収するには10~20年以上の長い期間を見込む必要があるため、ソーラーカーポートの導入は費用の節約よりも 「環境対策への貢献」 という観点で取り組むほうがよいだろう。
いのうえみつみ(乗り物ライター)