日本の「おばあちゃんの味」再現、BBQソース「Bachan's」創業物語
米カリフォルニア州の起業家が日系アメリカ人の祖母のレシピから作った、Bachan's(バーチャンズ)という名前のバーベキュー・ソースが大ヒットとなっている。生姜やみりん、米酢、ごま油などを原材料とするこのソースには、定番のバーベキューソース味に加えて、ゆずやホットスパイシー、みそ味などのバリエーションが用意され、ホールフーズやウォルマートの調味料コーナーで飛ぶように売れている。 「私は、親しみやすくて手に取りやすいブランドを作りたかったのです」と、現在43歳のバーチャンズ創業者兼CEO、ジャスティン・ギルは述べている。 日本語の「おばあちゃん」に由来する社名を持つ同社のソースは、2019年の創業直後から消費者を魅了した。バーチャンズのプロダクトは現在、アマゾンとホールフーズの両方で最も売れているバーベキューソースであり、米国で最も急成長している調味料ブランドだ。同社の推定年間収益は、7000万ドル(約110億円)を超えている。 バーチャンズは黒字化を果たしており、フォーブスは年間の営業利益率が20%に達すると推定している。ギルは同社の収益を明かしていないが、保守的な見積もりでもバーチャンズの企業価値は3億5000万ドル(約550億円)を上回り、さらに高いの金額で買収される可能性がある。 食品大手のマコーミックは、2022年にチョルーラホットソースを収益の10倍にあたる8億ドル(約1169億円)で買収していた。この分野では他にも、収益の8倍以上の金額で買収された企業が存在する。 「私は、長い間自力で資金を調達し、ビジネスをコントロールするために、個人でリスクを取ってきました」と話すギルは、2回の資金調達ラウンドで累計1700万ドル(約25億円)を調達した後も、会社の過半数を所有している。「私たちの成功の重要な部分は、規律ある戦略をとったことにあると思います」と彼は語った。 ■家族に伝わる伝統の味 ギルの起業家としてのルーツは、祖母のジュディ・ヨコヤマと暮らしていた頃にさかのぼる。子供時代の2年間をコロラド州にあった日本人捕虜収容所で過ごした第1世代の日系アメリカ人であるヨコヤマは、カリフォルニア州でギルの家族と一緒に暮らしていた。 祖母は、大きな集まりがあるたびに、日本からの移民だった曽祖母からレシピを学んだソースを作り、クリスマスの時期には、そのソースを家族の造園ビジネスの顧客にも配っていた。子供の頃のギルは、空のボトルを持ってきた人々に、新しいソースが入ったボトルを渡すのが好きだった。 彼は、家族と一緒に造園ビジネスに取り組んだ数年間の後、2013年にそのソースを市場に送り出すことを決意した。「私は自分が好きなことをやりたかったのです。そして、夢を追いかけて全力を尽くせば、道が開けることを3人の娘たちに見せたかったのです」とギルは語る。 大学で化学と園芸学を学んだ彼は、6年間をかけて、防腐剤や熱殺菌のプロセスを用いずに、ソースを製造する方法を考案した。