【注目のクラッチレス機構を徹底比較・前編】ホンダ「E-Clutch」+CB650R/ホンダ「DCT」+CRF1100Lアフリカツイン
E-Clutch:自動制御はクラッチのみ、変速はあくまでライダー主導としたイージスポーツライディングの新提案
【ホンダ・E-Clutch】 試乗車:CB650R E-Clutch(価格:108万9000円/車重:207kg) ■STDモデルとの価格差/重量差:5万5000円/2kg ■特徴 通常のクラッチ操作も残しつつ、自動クラッチ制御(つなぐ/切る)を付加した機構。クラッチレバーが存在するため大型自動二輪AT限定免許には対応しないが(実際にこの免許を所持する人はごく少数だろうが)、クラッチレバーを使わない発進、停止が可能。クラッチレス機構の中では簡易なシステムと言え、STDモデルからの価格差・重量差も少なく、今後小排気量や中型スポーツバイクへの普及もしやすそうな機構と言える。 ■長所 自動制御はクラッチ操作のみにとどめており、足シフトでの変速は通常と同様で、スポーツバイクの基本操作を残している。E-Clutch作動中は、スロットルを開ければ自動でクラッチが適切に滑りながらつながり、減速時も適切なタイミングで駆動が切れる。加速・減速時も、適切にクラッチを切って変速するクイックシフト的な機能も有する。一方、設定を切り替えると、通常のクラッチ操作&マニュアル変速に切り替えられる。 ■短所 他の機構のような、AT変速モードは装備せず、変速は常にライダー主導。速度が落ちて停止しても、自動シフトダウンはしない(6速トップで停止したら6速のまま)。E-Clutch機構をオフにすると、加減速時のクイックシフト的機能もオフとなり、基本的に手動クラッチ操作が必要となる。 ■ミニインプレッション マニュアルクラッチのようにライダーがアイドリング回転からつないで、ジワリと走り出すようなことができないため、E-Clutch作動時は通常のマニュアル発進よりは車体が前に多めに出やすい。そのため発進即Uターンのような操作はやや苦手。リヤブレーキを通常より多めに使って速度を制御してやるほうがUターンはスムーズにできる。そのため、ゼロ発進からのUターンに限れば、クラッチを切って(この動作でE-Clutchは一時的に解除されるし、こうしたマニュアルの介入は走行中も可能)走り出すのがスムーズかもしれない。 しかし、少しでも車体が動いていればクラッチのつながり、切れともに自然なタイミングで(半クラッチでの滑り挙動も含めて)、渋滞路でのトロトロ発進や停止を繰り返すシーンでは自然な挙動で便利。ワインディングでも基本的に滑らかなシフトアップ・ダウンが味わえ、ストレスのない走りを味わえる。 クラッチをマニュアル作動にした場合は、普通のミッション付きバイクそのものの操作と挙動で、普通にスポーツライディングを楽しめる点は、ほかのクラッチレス機構にはないE‐Clutchならではの特徴。STDと比べて価格差、重量差が少なく、E-Clutch付きを選びやすい気軽さがあり、疲れたときにクラッチ操作はさぼりたいけど、ATでの変速は要らないという向きは、これ一択で決まりだ。 現在のところ、この機構は試乗車のCB650RほかCBR650Rにしか採用されていないが、順次採用機種を拡大してもらいたいところ。 <ホンダCB650R E-Clutch主要諸元> ■エンジン 水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク67.0×46.0mm 総排気量648cc 圧縮比11.6 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル ■性能 最高出力70kW(95ps)/1万2000rpm 最大トルク63Nm(6.4kgm)/9500rpm 燃費21.3km/L(WMTCモード値) ■変速機 6段リターン 変速比1速3.071 2速2.352 3速1.888 4速1.560 5速1.370 6速1.214 一次減速比1.690 二次減速比2.800 ■寸法・重量 全長2120 全幅780 全高1075 軸距1450 シート高810(各mm) キャスター25°30′ トレール101mm タイヤF120/70ZR17(58W) R180/55ZR17(73W) 車両重量207kg ■容量 燃料タンク15L エンジンオイル2.6L ■車体色 マットバリスティックブラックメタリック、パールディープマッドグレー ■価格 108万9000円