若手が医師会理事に聞く―医師会はどんな団体? 加入の意義、活動支えるモチベーションの源泉は
医師会は国民や現場で働く医師を守るためにさまざまな活動を行っています。しかし、医師会がどのような団体であるのか、なかなか具体的なイメージがつかない方は多いかもしれません。「若手医師が抱える不安や困り事、医師会への疑問などを聞き、医師会の活動につなげていきたい」と語る神奈川県医師会理事の磯崎哲男先生(小磯診療所院長<横須賀市>:53)と小松幹一郎先生(小松会病院名誉院長<相模原市>:50)が、若手医師4人の意見、質問に答えます【座談会前編】。 ●参加した若手医師 ・中島理恵先生(横浜市立大学附属病院 循環器内科 2008年卒) ・山本恵理先生(小磯診療所 2009年卒) ・紫葉裕介先生(横須賀共済病院 外科 2019年卒) ・櫻井好太郎先生(横浜市立市民病院 整形外科 2012年卒)
◇神奈川県医師会・鈴木紳一郎副会長より
鈴木先生:皆さんは今それぞれ大学や医局に所属されていると思いますが、いざそこから離れたときに医師を守ることができるのが医師会だと思います。現場で働く医師に対し、なぜ医師会の存在や取り組みがなかなか伝わらないのか、今日は皆さんの質問や意見を聞きながら勉強したいと思います。
◇医師会に入るメリットは?
櫻井先生:「医師会」がどういうものなのか、これまで見聞きする機会がほとんどありませんでした。唯一あるとしたら、「開業したら地元の医師会に挨拶に行く」といった話を研修医時代に聞いたことがあるくらいです。私たちが医師会に加入するとどのようなメリットがあるのかなど、具体的に教えていただきたいです。 磯崎先生:医師会がどのような団体なのかが現場の先生たちに伝わっていないのは、こちらからの情報発信が不足している証拠だと思います。もしかすると「開業したら医師会という縄張りに入れてもらう」みたいな少し怖いイメージがあるのかもしれませんね。開業をきっかけに医師会に入る先生は確かに多いですが、入る/入らないはもちろん自由です。私も医師会に入るまでは「医師会は開業医のための団体」というイメージを持っていましたが、実は医師や国民を支えるためにさまざまな活動を行っています。 加入するメリットの1つには、日本医師会医師賠償責任保険制度(医賠責)があります。これは医事紛争が起こった際、紛争解決の全面的な支援が得られる制度で、保険料は医師会の会費に含まれています。また、神奈川県医師会の会員は、低金利で融資が受けられる神奈川県医師信用組合を利用することができます。医師は医局人事などで勤務先が頻繁に変わるため、銀行からすると「数年おきに転職を繰り返している人」とみなされてしまい融資のハードルが高くなるので、信用組合を利用できることは大きなメリットになると思います。 小松先生:医師会は「医師が医師であることを守る団体」です。病院で仕事をしている間は何かあれば病院という組織が守ってくれますし、今は病院の中に夢中になれることがあるので、病院の外に目を向ける機会は少ないかもしれません。しかし近い将来、先生たちの中にも、病院以外に活動の場を広げたり、フリーランスの道を選んだりすることもあるかもしれません。そうして、自分で自分の身分を守る立場になったときに「医師会に入っていてよかった」と感じる機会が増えると思います。病院で働く医師に対しては、彼らが仕事に専念できる環境をつくるために行政との交渉などを行っていますが、何か直接的なメリットを提供できているわけではない、というのが正直なところです。日本医師会会員の半数以上は勤務医ですので、そうした先生たちにも、もっとメリットを感じてもらえる団体を目指していく必要性は感じています。 また医師会は、予防接種や学校健診・乳幼児健診、学校医、介護認定審査委員など、地域におけるさまざまな医療活動を担っているので、病院で働いているだけでは得られない経験を積むことができます。また、小さなお子さんを育てていて常勤で働くことが難しい医師でも「この仕事なら手伝えそう」というものが、医師会の活動で見つけられるかもしれません。