「株主ファースト」の日本企業:配当よりも賃上げと設備投資に回せ―伊丹敬之・一橋大名誉教授
「従業員ファースト」へ
2000年ごろから米国流の「株主第1」に傾いていった日本の企業経営。では、伊丹氏はいわゆる「日本型経営」への回帰を提唱しているのだろうか。 「そういう風にまとめられるから、『守旧派』と誤解されてしまう。経営の実務は、原理と環境の掛け算で決まる。環境が変われば同じ原理でも経営の実態は変えなければいけない。原理そのものを『株主第1』にしてはならず、『従業員第1』の原理は堅守しないといけない。しかし、環境も変わっているのだから、年功序列とか、管理職ポストをやたら多くするといった日本企業の人事慣行は止めるべきだ」 「『従業員ファースト』への転換は経営者が覚悟するしかないだろう。金融庁がご印籠(いんろう)を振りかざし過ぎているから、もう少し主張する経営者がいてもいい。グーグルの例もあるし」
【Profile】
伊丹 敬之 一橋大学名誉教授、専門は経営学。1967年、一橋大学商学部卒業。72年、カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了(Ph.D)。その後、一橋大学商学部で教鞭をとり、85年に同大教授。東京理科大学イノベーション研究科教授を経て、2017年から23年まで国際大学学長。この間、スタンフォード大学客員准教授などを務め、05年紫綬褒章受章、23年に文化功労者に選ばれる。JFEホールディングスなどの社外役員を歴任。著書に『経営戦略の論理』(日本経済新聞出版社)、『人本主義企業』(筑摩書房)、『人間の達人 本田宗一郎』(PHP研究所)など多数。新著は『漂流する日本企業』(東洋経済新報社) 持田 譲二(ニッポンドットコム) ニッポンドットコム編集部。時事通信で静岡支局・本社経済部・ロンドン支局の各記者のほか、経済部デスクを務めた。ブルームバーグを経て、2019年2月より現職。趣味はSUP(スタンドアップパドルボード)と減量、ラーメン食べ歩き。