「ずっと待ってた」被災した飲食店が営業再開 「再建はできない…」店主の心を動かした常連客の温かい支援【愛媛発】
2024年7月に発生した愛媛・松山城の城山での土砂崩れから10月末で約3カ月半が経った。被災し休業を余儀なくされていた日本料理店「辻が花」が、ついに営業を再開した。常連客が待ち望んだ「この味」が再び戻ってきた背景には、店主・竹田利宣さんの奮闘と地域の温かい支援があった。 【画像】店のランチメニュー「鯛の豆腐包み蒸し」
再開を待ち望んだ常連客たち
松山市緑町にある日本料理店「辻が花」は、2024年7月に発生した松山城・城山の土砂崩れで甚大な被害を受けた。店内には泥水が流れ込み、冷蔵庫や棚が使えなくなり、壁には穴が開くなど、営業再開は困難を極めた。 竹田さんは「夜中未明に家内が異変に気が付いて私を起こしましてね。すごい音がしたんですね。ドカーンってドーンっていうような音がしまして行ってみると、冷蔵庫がカウンターの端の方まで1メートルくらいぐわっとずれてきたんですよね」と当時の状況を振り返る。 常連客たちは「この場所」で食べる竹田さんの「この味」を待ち望んでいた。 約15年通う男性客は「懐かしい味ですね。竹田さん、おいしいです」と再開を喜び、約3年通う男性客も「ずーっと待ってたから」と感慨深げに語った。
支援と再建への道のり
被災から1カ月後、竹田さんは営業再開に消極的だった。店の修繕にかかる多額の費用や、支援金の不足がその理由だった。 竹田さんは「店に対して支援金がほとんどないというのはね。もうちょっと(店の)再建はできないですよね」と語った。 しかし、常連客からの50を超える応援メッセージや支援が寄せられ、さらに松山市が被災者の生活再建に向けた給付金を発表したことも後押しとなり、再開を決意した。「長かったですね。とにかく長かったです」と避難指示が解除された際の心境を振り返る。 住宅兼店舗のため、竹田さんが本格的に家に戻れたのは被災してから約40日後。長引く避難生活の中で、日々を過ごす事に精一杯で、先を見通す余裕はなかった。しかし、再開に向けて動き出した竹田さんは「いつ再開するんや、いつ再開するんやという声がね、次第に増えてきて。やれるかもしれないなという感じですよね」と語る。