未来への生き方、考えるきっかけに 日本科学未来館が展示を大刷新
海面上昇に悩むフィジー、現地の人と“対面”
1時間半の報道公開で、筆者がまず向かったのは5階の「プラネタリー・クライシス」だ。導入部のシアターでは、南太平洋の島国フィジーを訪れる疑似体験ができる。美しい自然に触れながら現地の人々に会い、海面上昇や、激しいサイクロンなどの影響を受けている実態を生々しく語ってもらう。フィジーの深刻な状況は報道で知られてはいるものの、日本で暮らしていると正直、実感としてはつかみにくい。そこでシアターは、迫力のある風や光、音の効果により、あたかも現地にいるかのようなリアルな臨場感を味わえる仕掛けとした。映像越しとはいえ現地の人と向き合うことで、「他人事ではない」という感覚が芽生えた。
シアターを出ると、気候変動についてのパネル展示が続く。気温上昇は人間活動で排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが、主な原因であると説明。国や地域別のCO2排出量は、中国を筆頭に米国、インド、日本などが多いという。国単位だけでなく、人口当たりの排出量も直観的に分かるよう表現が工夫されており、日本に暮らす自分もここに関わる一人なのだと感じさせられる。フィジーを含む太平洋島嶼(とうしょ)国の排出量は、こうした国々に比べ、ごくわずか。ここで、シアターで“対面”した人々のことを思い出した。
このほか、食卓の会話から環境問題を考える展示、消費生活を支える発電などの映像説明、環境を守るために活動する人々の紹介、来館者によるアイデア投稿のコーナーなどで構成している。展示には、伐採してからの輸送距離の短い国産木材、通常は使いにくい端材などを採用し、また将来の展示終了後には再利用するという。いわば「展示の企画そのものが展示になっている」点もユニークだ。
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残る3つの新展示は、いずれも3階にある。未来館といえばかつて、二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」の実演が見られるスポットとしても人気だった。そのせいか、個人的には“未来館といえばロボット”というイメージも根強い。今回の展示は、ロボットが未来社会を支えるパートナーであることをより強く打ち出し、人とのより良い関係を考えさせるものとなった。