未来への生き方、考えるきっかけに 日本科学未来館が展示を大刷新
「ハロー! ロボット」では、コミュニケーションを楽しむロボットや、研究の先端にあるロボットを展示している。当初はソニーグループの犬型「aibo(アイボ)」や産業技術総合研究所のアザラシ型「パロ」など、見覚えのあるロボットも含めて並んでいる。定期的に更新していくというので、訪れる度に新しいロボットと対面できるかもしれない。 注目は、今回デビューした未来館オリジナルのロボット「ケパラン」だ。空色のかわいい姿で滑らかに体を動かしてみせている。現時点では「こんにちは」「ウインクして」などの文字が入ったうちわを見せると、ポーズを取ってくれる。今後、声や表情などの感情表現、呼びかけに対する振る舞いのパターンを追加し、“成長”させていく。どう成長させるかは、来館者の意見を踏まえながら決めるという。来館者が育ての親であるともいえるケパラン。未来館を象徴する人気キャラクターとしても、成長しそうだ。
ロボットがテーマの展示が、もう一つ。「ナナイロクエスト」では、貸し出されるタブレット端末を手に仮想の未来の街「ナナイロシティ」を探検する。課題を解決していきながら、ロボットとの望ましい付き合い方を考える。筆者も、よその記者とグループを組んでめぐってみた。ネタバレになるので細かくは書かないが、将来、ロボットに何をどこまで頼むのか、どんな仕事はやっぱり人間がやるべきなのか…。子供だけでなく、大人も考えさせられる。
日頃考えたくもない?テーマをあえて考える
老いに関する展示は、世界的にも珍しいという。その名もズバリ「老いパーク」。目と耳、運動器、脳のそれぞれの老化を、ゲームを通じて楽しみながら疑似体験できる。老いの仕組みや対処法の最新研究、研究開発中のロボットによる支援技術などを紹介。未来館の担当者は「やがて自分の身に起こることとして、あるいは既に実感していることとして、向き合い、考える展示になれば」と話した。 日頃18歳と自称している筆者も含め、多くの人にとって老化は、心理的にあまり直視したくないテーマだ。多くの人に見てもらいたいはずの展示施設が、それをあえて常設展示にしたのは大英断といえるだろう。ちなみに、展示入り口付近に置いてあったリーフレット「老いパークガイド」にも、ある大胆な仕掛けが施されていた。
新展示には来館者から感想や問題解決のアイデアなどのコメントを得て、それを後の来館者が確認できる端末などの工夫も備わっている。コメントの蓄積を通じ日々、展示を充実させていく双方向の取り組みといえる。また体験重視という特徴ゆえに、同じ展示でも訪れる度に、少し違った感想を抱くかもしれない。見学の仕方はもちろん自由で、お台場散策の足でフラリと立ち寄ってみるのもいい。が、何か自分なりのテーマを考え、メーンで楽しむ展示を決めておくなどして訪れると、考えや知識がより深まりそうだ。 (草下健夫/サイエンスポータル編集部)