「虚無にはごはんが効く」疲れた自分をいたわる食事の力をフードエッセイスト平野紗季子に聞いた
お菓子の、悲しみに寄り添う力はすごいです
【写真】平野さんが「供えらたい菓子」と評する、京都「kew」のカスタードドーナツ。「セーターに散らばった砂糖のきらきらまでもが愛おしい」。 平野さん:悲しいときは、やっぱり甘いものに支えられていますね。お菓子の悲しみに寄り添う力はすごいです。家では、冷凍庫に好きなお菓子をたくさんストックしてあるので、つらいときに解凍してパクっと食べる。会社員時代は「ウエスト」のシュークリームに支えられていました。世知辛さ通さない外皮、心の隙間埋め守るカスタード……。生地がすごくやわらかくって、やさしいんです。 つらい経験、つまり、闇がお菓子をおいしくするんだ、と気づいたのは社会人になってからのことでした。学生時代からよく食べていた味も、仕事で大変な経験をしてから改めて食べてみると「前に食べてたときと全然違う!脳が輝くほどおいしい」と感じたこともありましたから。 ▶平野紗季子さん 食を通じて世界を理解していくということ へ続く 平野紗季子 フードエッセイスト、フードディレクター。小学生から食日記をつけ続け、大学在学中に日々の食生活を綴ったブログが話題となり文筆活動をスタート。雑誌・文芸誌等で多数連載を持つほか、ラジオ/podcast番組「味な副音声」(J-WAVE)のパーソナリティや菓子ブランド「(NO) RAISIN SANDWICH」の代表を務めるなど、食を中心とした活動は多岐にわたる。著書に『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)、『味な店 完全版』(マガジンハウス)など。 撮影/中村力也 取材・文/高田真莉絵 構成/渋谷香菜子