人選漂流機関長だけで13人…弾劾政局で止まった韓国科学技術
戒厳・弾劾政局が長期化し、韓国の国家競争力と直結している科学技術関連の政策と法案は漂流状態に陥った。年内に制定が有力視されていた「人工知能(AI)基本法」は国会議論で後回しにされ、科学技術界各機関のリーダーシップの空白は長期化している。 非常戒厳事態と国会弾劾訴追案表決不発以降、科学技術界は全般的に「方向舵がなくなった」落ち着かない雰囲気だ。既に推進されている事業は予定通りに行えばよいが、上層部で決めなければ動かないものはすべて遅延している。宇宙航空庁傘下の韓国航空宇宙研究院(航宇研)と韓国天文研究院(天文研)は新任院長先任手続きが中断された。現在機関長任期が満了あるいは今年満了予定の科学技術関連機関は上記2カ所を含めて合計13カ所だ。航宇研と天文研の場合、宇宙航空庁が8月選任広告を出し、10月に院長候補を6人に圧縮したが、その後の手続きは期日に約束がない状況だ。航宇研関係者は「機関長級は通常、竜山(ヨンサン)(大統領室)が指定した人になるが、その意志決定自体がストップし、その後の手続きがすべて保留になっている」と話した。 今年大統領が委員長を任命するか任命予定だった国家AI委員会、国家宇宙委員会、国家バイオ委員会など各分野政策議決機構も公式活動を継続できるか未知数だ。今月発足予定だった国家バイオ委員会はスタート自体が先送りになった。宇宙航空庁を開庁して政府次元で国際競争力を確保しようとした宇宙分野はリーダーシップの空白によって動力を失う危機だ。今月末に次世代発射体の開発と月着陸船など宇宙開発の主要アジェンダを議論する計画だった国家宇宙委員会第3次会議も開催できるかどうか不透明になった。国家AI委員会もAI基本法(人工知能の発展と信頼基盤の造成などに関する法律案)が国会を通過できず、円滑な活動にブレーキがかかった。建国(コングク)大学機械航空工学部のイ・チャンジン教授は「宇宙やAIなど日々技術力格差が広がり、国際協力が重要な分野は国家次元で推進力を持ってリードしなければ主導権を握れないまま引っ張られていくことになる」と話した。 年内の制定が有力視されていたAI基本法も弾劾政局に足を引っ張られた。9日、国会法制司法委員会に上程予定だったAI基本法は議論テーブルにのせることに失敗した。AI基本法には人間の生命・安全・基本権に重大な影響を及ぼしかねないAIを「高影響AI」と定義してこれを提供する事業者責任を強化し、大統領直属委員会を設置してAI関連の主要政策事項を審議・議決する内容などが含まれている。 グラフィック処理装置(GPU)などAIインフラ不足を解消しようと科学技術情報通信部が国会と協議中だった国家AIコンピューティングセンター構築予算増額議論も停滞状態に置かれ、AIスタートアップのため息は大きくなっている。AIスタートアップ関係者は「事実上、海外データセンターインフラをレンタルする形で使うことになれば外貨も流出してコスト負担が大きくなり、AIエコシステムに悪影響を及ぼすことになる」と表情を曇らせた。 半導体産業競争力強化のための「半導体特別法」も議論が中断した。あるAI半導体スタートアップ関係者は「海外ではエヌビディア(NVIDIA)に代わるAI半導体が日々発展していて、半導体特別法の場合、与野党を問わず国会議員の関心も高く、今年必ず通過するだろうと期待したが、今回の戒厳事態で事実上あきらめている」と話した。