トップアスリートとの共同開発が未来のLifeWearを創る スウェーデン協業で機能性もサステナビリティも大きく前進
サステナビリティの取り組みもけん引、公式ウェアの約98%の品番にリサイクル素材を採用 店舗で回収したユニクロ商品のケミカルリサイクルも初めて実現
2019年から進めてきたスウェーデンチームとの協業だが、今回、とくに大きく前進したのがサステナビリティの取り組みだ。工場の製造工程で発生した廃棄される糸から作ったリサイクルナイロン素材やリサイクルポリエステル素材などを積極的に使用し、新規で開発したアイテムの約98%のアイテムにリサイクル素材を採用。公式ウェアでは、店舗で回収したユニクロ商品を初めて化学的にリサイクル(ケミカルリサイクル)して16アイテム・5400枚に採用した。これらにより、公式ウェアのリサイクル素材の使用量の割合は約50%に拡大(東京大会では約33%)。温室効果ガス排出量は東京大会提供ウェアの主素材の原材料比較で約50%削減している。ファーストリテイリンググループが掲げる「2030年までに全使用素材の約50%をリサイクル素材など温室効果ガス排出量の少ない素材に切り替えることを目指す」という目標に向かって大きなけん引役となっている。 「どうしても実現できなかった公式ウェアのスイミングキャップなどを除き、できる限り、最大限の挑戦をして循環型の素材を使用しました。グローバルで販売するUNIQLO × SWEDEN ATHLETE COLLECTIONの商品については、商品により比率は異なりますが、全アイテムにリサイクルポリエステル素材を使用しています。サステナビリティに対する意識の高い欧州・スウェーデンと協業する大きな意義の一つでもあります。サステナビリティや循環型の実現は企業姿勢として今後も強く推していきたいと思っています」
躍進する欧州やグローバルで存在感を発揮し、接点づくりや認知度向上の一助に
ユニクロの欧州事業は今、グループ内でダントツの成長率を誇っている。2024年8月期上期は売上が4割近く伸び、営業利益は1.5倍になった。全世界の旗艦店売上高トップ10のうち4店舗が欧州にあり、今年4月にローマにイタリアの2号店を出店したのに続き、今秋にはポップアップストアを展開してきたポーランドのワルシャワに常設店をオープンするなど出店にも意欲的だ。 「グローバルに事業を展開していく中で、『私たちは何者なのか』『どれだけその国や地域に住む方々のためになるのか』を伝えながら出店しています。中でもそこで暮らす方々の生活にどう馴染むかはとても大事なことです。これからヨーロッパで出店を拡大していくうえで、『日本企業だけど、スウェーデンのナショナルチームの公式ウェアを扱っている』ということは大いにユニークだし、名刺代わりになるはず。この高機能のウェアを着たスウェーデン選手に大活躍して喜んでもらいつつ、そこで得た知見をFuture of LifeWearとして世界中のお客様に届けられれば、すごく良い循環ができると思います」 パリはユニクロのパリR&Dセンターのアーティスティック・ディレクターを務めるクリストフ・ルメールの拠点であり、ヨーロッパという意味では、ジョナサン・アンダーソンやクレア・ワイトケラーなど、協業パートナーが活躍する場所でもある。 「日本発のユニクロが、パリという場所で、スウェーデン代表選手団の公式ウェアを披露し、共同開発されたコレクションを発売することは、とても意味があります。ユニクロのコアコレクションと融合しながら、洗練されたイメージを発信し、ブランド認知でも役立てて行ければと思っています」 「UNIQLO × SWEDEN ATHLETE COLLECTION」の販売は、日本国内9店舗とECと限定している。「数は少ないけれども、売り場が広い旗艦店などで、しっかりとお客様にメッセージが伝わるような形で展開します。そこで得た良いフィードバックに基づいて、翌年以降、ユニクロ本体のコアプロダクトとしての販売も検討していきます」
パリやスウェーデン、ニューヨークなどの旗艦店でも販売する。「店舗が最大のメディアだと感じているので、日本はもちろん、海外の旗艦店などでも展開していきます。私たちの旗艦店は一等地にあるので、近くに宿泊されたり観光されたりする方も多くいらっしゃいます。お客様に触れる接点をうまく活用しながら、日本から来た単なるブランドではなく、私たちの理念やLifeWearのコンセプトが伝わるような展開をしていきたいと思っています」
松下久美