CMに大谷翔平、ダンロップ「二刀流」の勝算 タイヤの1%市場に挑む
「ダンロップ」ブランドのタイヤを製造・販売する住友ゴム工業は10月1日、オールシーズン(全天候型)タイヤの新製品「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」を発売した。オールシーズンタイヤは国内での普及率は低く小さな市場とされるが、同社はタイヤ価格を最高位に設定した。CMには米大リーグで活躍する大谷翔平選手を起用し「社運をかけた取り組み」(同社)と話す。どんな勝算を見込むのか。 【関連画像】ダンロップのタイヤの種類別、性能の違い一覧(写真=住友ゴム工業提供) 「あらゆる環境にシンクロし、夏でも冬でも同じタイヤで走れる、今までの想像を追い抜くタイヤで、僕の代名詞である二刀流や、新しい環境に挑戦している僕と合っている」――。7月末に都内で開かれた記者会見で、大谷選手がビデオメッセージを寄せた。 ●わずか1%の市場 オールシーズンタイヤとは、一般的なタイヤ「夏タイヤ」と、積雪時にも走行できるスタッドレスタイヤと呼ばれる「冬タイヤ」の両方の性能を持つタイヤだ。年間を通して使えるため利便性が高い。 ドライバー人気が高いように思えるが、国内でのシェアは決して高くない。調査会社のGfK NIQジャパン(東京・中野)によると、2024年1月から9月のタイヤ国内販売量に占めるオールシーズンタイヤの割合は1%にとどまる。一方で、住友ゴムによると北米は6~7割ほどがオールシーズンタイヤだという。 背景には、日本人の国民性も影響している。積雪の多い地域で冬タイヤが使用されるのはもちろんのこと、日本人の心配性な気質もあり、数年に一度、雪が降るような地域であっても冬タイヤを使用するドライバーは多い。 また、オールシーズンタイヤは夏タイヤよりも走行音が大きく、冬タイヤよりも滑りやすいという「中途半端な存在」として敬遠するドライバーも少なくない。 住友ゴムは19年、初めてオールシーズンタイヤを発売している。その後継にあたる今回のシンクロウェザーでは、路面環境に応じてタイヤの軟らかさを変化させる独自技術「アクティブトレッド」を採用した。 一般的なタイヤは、雪道などの低温環境ではゴムが硬くなり、摩擦力が低下して滑りやすくなる。アクティブトレッドでは、特殊な素材をゴムに混ぜ込むことで、低温や雨天時にタイヤが軟らかくなるように、高温や晴天時には硬さが戻るようにした。 夏タイヤと冬タイヤ、両方の性能を伸ばす「二刀流」をより高いレベルで実現した形だ。同社の山本悟社長は「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)も想定し、省資源化も期待できる製品」と自信を見せる。 ドライバー視点では、コスト面での効果も大きい。一般的に、夏、冬とタイヤを使い分けている場合、交換作業にかかるコストは5000円~1万円ほどとされ、年間2回行うことになる。住友ゴムの試算によると、オールシーズンタイヤを使用した場合は、夏冬タイヤを購入し交互に使用した場合に比べ、3年間で8万円ほど安くなるという。ドライバーにとってお得になるわけだ。