眼窩底骨折、右肩脱臼に左ヒザ前十字靭帯断裂…度重なる怪我にも不屈の闘志 野崎渚がリングに立ち続けるワケ
「あきらめの悪い女」と笑う真意
「リング上でけがをした場合は、そんな見せたくないものを見せてしまっているわけだから、私にはこの仕事は向いていないのかな……と思ったこともありました。左ヒザの前十字靭帯をやった時は、腰のヘルニアもあって、椅子に長時間座っていられなかった。それに(大きな)けがをして、リハビリがうまくいかなかったりすると、次に大きなけがをしたら辞めよう……とか、思ったこともあったのに、結局、辞めたい、にはならなくて……。だから、あきらめの悪い女ですね」 野崎は冗談まじりにそう言って笑って見せたが、自分を「未練がましい女だ」と思うこともあったという。 「私が去年フリーになったのも、けがをして休んでいる間に、どうせこのままプロレスラーを続けるのであれば、今までとは違う景色が見られるかもしれないと思った部分があって。実際にそれまで出たことがない団体に出るようになって、フリーだから全部やらなきゃいけないのは大変だけど、今まで見たことがない新しい景色が見えて、今は楽しさも知って。それって私がけがをしたからこそ、いろんな思いを経験してたどり着いたのだと思うから、今は、けがをしたお陰だとも思えるし、あの時に辞めなくてよかったと思っていますね」 そこまでの境地に至った野崎に対し、蒸し返して申し訳ないが、Sareeeの裏投げを食らうと危険だと分かってしまった今、「食らわないように……」とは思っても、次に食らって大変なことになったら……とは考えないものなのか、とあえて聞いたところ、野崎は「対人なので、100%はないと思うんです。だから(Sareeeの裏投げは)意地でも投げられないように対処します。というか、リングに上がることに怖さを感じるのであれば、それこそ辞める時だと思いますね」と話した。 それだけ腹をくくり、不屈の闘志を燃やしてリングに上がっていることがダイレクトに伝わってくる話だが、確かに「怪我」とは読んで字の如く、「我が怪しい」と書く。要は、相手の問題以上に、己のコンディションや選手個々のメンタル面にも関わってくる部分が非常に大きい。また、選手によってどの程度のレベル(位置)で試合を続けていくのか。それによっても変わってくるように思う。 いずれにせよ、プロレスがコンタクトスポーツである限り、けがとの遭遇は避けられない。 選手においては常にそれを念頭に置くことを最優先に、また、運営側はこれまで以上に安全面の強化を視野に入れながら、リングを巡るビジネスと真摯(しんし)に向き合っていくしかない気がする。
“Show”大谷泰顕