平成生まれの夢の部屋? 悶えるほど懐かしいモノで溢れた空間の主を直撃
懐かしいものを見ると、なぜ人はこんなにも盛り上がってしまうのだろうか。ここ数年レトロブームが続いているが、そのなかでも“平成レトロ”は多くのジャンルでブームを巻き起こしている。今回は、自宅を平成のアイテムで埋め尽くした平成こじらせ部屋さんにインタビューを実施。 【写真】ビーダマン、プチコロン、ポケットピカチュウ、ミスティオの空き缶まで……部屋に詰まった平成アイテム 平成生まれなら思わず唸ってしまう懐かしいアイテムの数々や、こじらせ部屋をどのようにして作り上げたのかについて語ってもらった。 ・平成こじらせ部屋を発信する意義 ──本日はおじゃまします。これは……すごいですね。それぞれの部屋のコンセプトについて教えてください。 平成こじらせ部屋:ひとつはYouTubeでも発信している「平成こじらせ部屋」、もうひとつは僕が小学5年生だった1999年の再現部屋ですね。 ──部屋作りはいつから始めたのですか? 平成こじらせ部屋:もともとコレクションをするのが好きなタイプで、漫画やフィギュアは持っている方でした。本格的に懐かしいもの縛りで集め始めたのは、2年半前からですね。 ──なぜ“懐かしいもの”に限定するようになったのでしょうか? 平成こじらせ部屋:友達が遊びに来たときに、懐かしいものがあると話がめちゃくちゃ盛り上がったんです。僕は今年(2024年6月現在)36歳になる代なのですが、少年時代のもので盛り上がるような年代でもありまして……(笑)。友達と当時の思い出を共有してすごく楽しかったので、じゃあ懐かしいもので統一してしまおうかということで、部屋作りを始めました。 ──平成こじらせ部屋は、SNSでも積極的に発信をしていますよね。 平成こじらせ部屋:そうですね。でも僕のフォロワーさんや知り合いの方のなかには、もっとすごいコレクターの方がたくさんいます。僕は少し発信をしているだけで、周りのコレクターさんに比べたらアイテムの量や収集歴はまだまだ浅い方ですね。 ──なぜSNSで発信しようと思ったのですか? 平成こじらせ部屋:せっかく集めているならという気持ちもあったのですが、バラシ屋トシヤという名で漫画家として活動をしていまして、発信することで本業にもつながったら嬉しいなと思いました。動画では「こじらせ子ちゃん」というキャラクターも登場させているんですけど、平成こじらせ部屋をコンテンツにすることは、発信を始めた当初から意識していました。いまは発信した収益でまた懐かしいものを購入するというサイクルで、部屋作りをしています。 ・こだわり抜いた空間作り ──部屋作りはまず何から始めたのでしょうか? 平成こじらせ部屋:ものを集めるより先に、土台作りから始めました。部屋を作り込むのはもともと好きだったんですけど、とにかくものが多いので綺麗に収納できる場所をまずは用意したんです。 平成こじらせ部屋:とくにこだわったのは照明ですね。思い描いたような照明付きのショーケースがなかったので、自分で穴を開けて照明を取り付けました。漫画を並べている棚も自分で作って、照明も埋め込みました。 平成こじらせ部屋:光の強さはあえて弱めにしています。最新のおもちゃとかプラモデルなどはLEDを使って明るく見せてあげた方が映えると思うんですけど、僕の部屋にあるのはレトロで古いものなので、ちょっと見えにくくても薄暗いくらいがちょうどいいかなと思い、あえてそういう設定にしています。 平成こじらせ部屋:あとは掃除がしやすいかどうかもこだわっていますね。床にものを並べ てしまうと掃除がしにくくなってしまうので、床にはあまり置かないようにしています。細々したものは全部ショーケースに入れています。ケースに入れたらホコリもつかないので。掃除のしやすさは1番こだわっていますね。 ──平成こじらせ部屋さんのお部屋は、ものが多くてもすっきりとした印象ですよね。 平成こじらせ部屋:コレクターさんには2種類いると思っていて、ものをとにかく集めて所有しているのが楽しいという人と、僕みたいに飾るまでを楽しみたい人がいるんです。僕はアイテムを飾って、自分が気に入る空間にしたいというタイプなんですよね。だから所有数は少ない方だと思います。 ──平成こじらせ部屋さんのように、発信しているコレクターさんは意外と少なかったりするのでしょうか? 平成こじらせ部屋:あんまり僕みたいに表立って発信している人はいないかもしれないですね……。発信しているからこそ、ありがたいことにすごいコレクターさんと知り合える機会もあります。 平成こじらせ部屋:たとえばこの空き缶のコレクションなのですが、『ミスティオ』『シャッセ』『天然育ち』といった、平成の時代を振り返るうえで“キー”になるようなものは、意外と売っていなかったりするんです。こういうものは缶コレクターの方が譲ってくださって、すごく嬉しかったです。昔の缶って、出回っていたとしても単品では販売してないんですよね。ダンボール1箱分で1万5、6千円とかで売っていることが多いんです。だから貴重なものを譲っていただけてとてもありがたかったです。 ──発信しているからこそ生まれる“横のつながり”があるんですね。 平成こじらせ部屋:逆に発信しているから気をつけていることもあります。懐かしいもので揃えていると、現代のものがあると逆に目立ってしまうんですよね。だからできるだけ現代のものが見えないように、プロジェクターは棚のうえに置いて見えないように設置したり、ゲームの箱などを駆使してコンセント類を隠したりしています。YouTubeで発信をしていると、たまに「これいま発売してるやつじゃん」とツッコまれることもあって……(笑)。 こちらの再現部屋も、ビデオやゲームが揃いすぎてて現実の小学生の部屋と仮定すると少しリアリティがないというか、豪華すぎるんです。実際の部屋は服を飾ったりなんかもしていないと思うんですけど、僕は“見て楽しめる”部屋にしたいので、完全再現というよりは、あのとき憧れていた部屋くらいに思っていただけると助かります(笑)。 ・ルールは自分が懐かしいと思うかどうか ──コレクションのなかで思い入れのあるものはありますか? 平成こじらせ部屋:まずはこのハイパーヨーヨーの『ハイパーレイダー』ですね。渋谷の『リワインド』というヨーヨー専門店で購入したものなのですが、中村名人にサインをいただきました。一緒に写真も撮らせていただき、思い出の品です。 平成こじらせ部屋:あとは、僕が人生で初めて買った『週刊少年ジャンプ』ですね。93年に販売したもので、当時僕は5歳でした。『ドラゴンボール』のポスターがついていたのを鮮明に覚えていて、どうしてもこのポスターが欲しくて親に買ってもらった思い出があったんです。連載していた作品の記憶を頼りになんとか調べて、手に入れました。 ──単に平成のものを集めているというよりは、ご自身の思い出に関連したものが多いのでしょうか? 平成こじらせ部屋:そうですね。集めるときも、貴重なものというよりは、自分が懐かしいと感じるかどうかを大事にしています。再現部屋もあくまで自分が小学生のときにあったものや、欲しかったなと思っていたものを置いているので、昭和のアイテムもあったりします。レトロブームで価格がかなり高騰しているものもあるのですが、僕の部屋にそこまで高いものはないですね。このペン立てもSNSですごく反響をいただいたのですが、これなんかはもはや自分の手作りです(笑)。 ──紙粘土のペン立て、懐かしいです……!(笑) あくまで自分軸で懐かしいものを集めているのですね。 ・前向きに過去を振り返る ──最近はリバイバルブームが続き“平成レトロ”という言葉も生み出されたかと思いますが、改めて平成のよさについてどう感じていますか? 平成こじらせ部屋:平成というと、たとえばY2Kファッションや当時の高校生がしていた髪型、ルーズソックスなんかも印象にあると思うのですが、僕の場合はたまたま「懐かしいな」と感じるものを集めたら平成のものが多かった、という感覚なんですよね。 最近流行になっている平成レトロ文化は、実際にその平成時代を生きていたわけではない若い世代の人たちにも愛されていますよね。僕はいまでこそ年代を定めてコレクションしていますが、そういう平成レトロとは少し意味合いが変わってくるのかもしれません。 ──自身の“懐かしい”という感情が軸になっているということですが、懐かしむよさはどういった部分にあると感じていますか? 平成こじらせ部屋:やっぱり癒されるんですよね。地元に帰省して実家の部屋やよく見ていた景色を眺めたり、あのころよく聴いていた曲を聴いたりするとすごく癒されます。懐かしむ=癒しなんです。 SNSで発信をしていると、懐かしむことに対して「過去に縛られてどうするんですか」とか「いまを生きろ」といういろんな意見が来たりします(笑)。でも僕は「あのころに帰りたい」と言っているわけではないんですよね。こんな部屋を作っておいて本当かよと思われるかもしれませんが(笑)。 平成こじらせ部屋:僕的には、前向きに過去を振り返っている感覚なんです。いままでの思い出があるからいまがあるというか、あのころからいまが地続きでつながっているんだなと感じます。いまを楽しみつつも、ひとつの趣味として“懐かしい”を楽しんでいますね。 ──今後集めたいものや、チャレンジしたいことはありますか? 平成こじらせ部屋:もっといろんなジャンルの部屋を作ってみたくなりました。たとえば高校生の部屋や、平成女児の部屋など……。最初は自分の好きなジャンルをコレクションしていたのですが、調べていくうちに自分が通ってこなかったジャンルにもどんどん興味が湧いてきたんですよね。最終的には一軒家に引っ越して、“平成こじらせハウス”を作るのが目標です!
はるまきもえ