「続編ヒットしない」定説を破るディズニーの躍進。モアナとインサイド・ヘッド続編ヒットの背景
ハリウッド大手メディアグループのなかで、配信プラットフォームを持つのはディズニーだけではない。ワーナー・ブラザースにはMax、ユニバーサル・ピクチャーズにはPeacockがある。 そうしたなか、ディズニーでシリーズ続編で記録的ヒットが続けて生まれている背景には、ディズニーアニメとファンとのエンゲージメントの強さが影響していることが考えられる。 ■2025年も続編が次々と公開 この3つが複合的に重なりあった結果が前述の2作連続の続編ヒットだ。
ディズニープラスがディズニーアニメの日常のタッチポイントとなり、それが下地にあることでエンゲージメントを強めつつ、ファンの新作への興味や期待を前作視聴から増幅させ、劇場公開への爆発的ヒットにつなげる。 そんな配信から劇場公開への続編ヒットのエコシステムが機能しはじめていることがうかがえる。この先のディズニーアニメのシリーズ続編においては、前作を上回るヒットが続いていくことが期待される。 その真価が問われるのは2025年だ。
前作から9年ぶりの続編となる『ズートピア2』(2025年11月公開)は、前作『ズートピア』(2016年)も世界興収10.2億ドル(日本興収76.3億円)の大ヒットになっていた。それを上回ったうえで、どこまで興収を伸ばすか。 また、ピクサーの新作『星つなぎのエリオ』(2025年6月北米公開、日本は夏公開予定)は、世界興収8.1億ドルのヒットとなった『リメンバー・ミー』(2017年)のスタッフが参加していることから、シリーズ続編ではない新作の場合、スタッフ関連作品などがエコシステムにどのように影響するかも注目される。
このディズニーアニメのエコシステムは、かねてディズニーが掲げていた、配信と劇場のシームレスな連携の成功パターンのひとつだ。 これから期待されるのは、その精度を高めるのと同時に、実写などアニメ以外の作品タイプや、シリーズ続編以外へ、このエコシステムを応用すること。それにより、多様なヒットフォーマットを有するエコシステムを確立していくことにつながるだろう。 ■覇者として帰還 2025年以降、実写の大作シリーズ続編も続く。今年のアニメに続いて、そこへの結果が表れれば、業界へのインパクトは大きい。
コロナ禍以降、一時期は不振を極めていたディズニーだが、それを糧にして強度が増した、世界のエンターテインメントの覇者として帰還する日は近いのかもしれない。
武井 保之 :ライター