2024年12月のマーケットの振り返り【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】
6.為替
<現状> ●円の対米ドルレートは、日銀の金融政策決定会合で利上げが見送られたことやFOMC後に米長期金利が上昇したことなどを受けて、大幅に下落しました。日銀の追加利上げが遅れるとの見方なども要因です。 ●円は対ユーロで、160円割れまで下落しました。ECBの利下げとドイツ、フランスの経済、政治への懸念等が円高要因となりましたが、日銀の利上げ見送りなどが円安要因となりました。 ●円の対豪ドルレートは、下旬に上昇しました。トランプ政権が中国製品の関税を引き上げれば、中国への輸出依存度が大きい豪州への悪影響が避けられないとの懸念が要因と見られます。 <見通し> ●円の対米ドルレートは、米金利の低下に伴い、緩やかに上昇すると予想します。FRBは利下げを継続し、日銀は利上げが予想されることから、金利差が縮小し円の上昇要因になるとみています。ただし、植田総裁のコメントを読むと、利上げは後ろ倒しとなるリスクが高まっているようです。 ●円の対ユーロレートは、ECBによる追加利下げが、日銀の追加利上げよりも大きく意識され、上昇が続く見込みです。 ●円の対豪ドルレートは、米国が緩やかな利下げに動きオーストラリア準備銀行(RBA)も追随するとみられるなか、日銀の追加利上げが意識され、緩やかに上昇すると見ています。
7.リート
<現状> ●グローバルリート市場(米ドルベース)は、FRBが、12月に政策金利の誘導目標を0.25%引き下げたにもかかわらず、10年長期金利が上昇したことが主な悪材料となり、米国主導で下落しました。S&Pグローバルリート指数のリターンは前月末比▲7.8%となりました。ただし、円ベースのリターンは、円安がプラスに寄与し、同▲3.5%とマイナス幅が縮小しました。 ●米国のFOMCで、物価上昇率など経済予測が引き上げられたことは、空室率改善などにポジティブ要因と見られます。しかし、25年以降の利下げペースが緩慢になると示唆され、米国長期金利が上昇したため、リート市場にはネガティブ効果の方が大きくなりました。欧州やアジアでも、各地の長期金利が下げ渋ったこともあり軟調な展開となりました。日本は、長期金利の上昇に加え、投資信託からの売り優勢という需給要因もあり、下落しました。 <見通し> ●グローバルリート市場は、目先、米国の新政権による経済政策が米国長期金利の上昇を招くのではないかという懸念が後退するまでは、不安定な動きになる見通しです。欧州、アジアのリート市場も、各地の金利が米国の長期金利の影響を受けていると見られることから、不安定な動きを予想します。 ●少し長い目で見ると、米国リート市場では、データーセンターとヘルスケアセクターのシニアハウジングの高成長が続いています。オフィスリートはバリュエーションが相対的に割安となっており、ファンダメンタルズの改善が待たれます。欧州、アジア・オセアニアでは、景気の回復や政策金利の引き下げが期待できるため緩やかな上昇を予想します。日本はオフィス賃料の改善が見込まれますが、日銀の利上げ懸念が大きく、低調な取引が続く見通しです。