2024年12月のマーケットの振り返り【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】
3.金融政策
<現状> ●米連邦準備制度理事会(FRB)は、12月に政策金利(フェデラルファンド(FF)金利)の誘導目標を0.25%引き下げ、4.25~4.50%としました。ただし、インフレ率見通しなど経済予想が引き上げられ、来年の利下げペースが緩慢になることが示唆されました。 ●ECBは12月の理事会で、預金ファシリティ金利(政策金利の下限)を0.25%引き下げることを決めました。「必要な限り十分に制限的な金利を続ける」という文言も削除されました。ECBは25年において、物価上昇率が2%近傍で安定するという確信を強めているようです。 ●日銀は12月の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コール翌日物金利)を0.25%で据え置くことを決めました。米国の新政権の経済政策の不確実性が大きいことと春闘のモメンタムに関する情報がもう少し必要なことを据え置きの理由として挙げました。 <見通し> ●FRBの参加者は、トランプ関税をある程度想定に入れて、25年中の利下げ回数予想を2回に修正した模様です。利下げ自体は続く見通しとなっています。弊社の予想も四半期に1回から半年に1回、25年3月と9月に変更します。 ●ECBは、欧州経済が低成長を続けていることやトランプ政権の政策の影響がユーロ圏経済に抑制的に働くと見られることから、今後も利下げを実施すると予想します。賃金、インフレのデータを確認しながら、0.25%の利下げを続けると想定しています。 ●弊社は、日銀は25年1月に、展望レポートで経済・物価動向総合的に点検した上で、金融政策の正常化に向けて追加利上げを実施するとみています。しかし、植田総裁のコメントからは、後ろ倒しとなるリスクが高まっているように見えます。
4.債券
<現状> ●米国の10年国債利回り(長期金利)は、12月のFOMCでインフレ率見通しなど経済予想が引き上げられ、来年の利下げペースが緩慢になることが示唆されたことを主因に、上昇しました。 ●ドイツの長期金利は、ECBが12月の理事会で0.25%の追加利下げを決め、エネルギーコストの低下を背景に物価上昇率も低下していますが、米長期金利の上昇に引きずられた格好で高止まりしました。 ●日本の長期金利は、12月の日銀の政策金利引き上げは見送られましたが、米長期金利の上昇などを受けて上昇しました。植田総裁は米国新政権の経済政策や25年の賃上げの動向を見極めたいと述べました。 ●米国の投資適格社債については、新政権発足後の経済成長期待も高まり、社債スプレッド(国債と社債の利回り差)は前月比でほぼ横ばいでした。 <見通し> ●米国の長期金利は、トランプ政権が行うであろう経済政策が市場参加者に金利上昇リスクを意識させるため、足元の上昇した水準に高止まりする展開を予想します。FRBの利下げは、ペースは緩慢なものとなりますが、継続される見通しです。 ●欧州の長期金利は、物価上昇率の低下を背景にECBが追加利下げを継続すると想定し、緩やかに低下する展開を見込みます。 ●日本の長期金利は、日銀が金融政策の正常化路線を維持しており、追加利上げ期待を背景に上昇すると予想します。