日の丸ベンチャー育む「ナスコンバレー」 海外進出も 【WBSクロス】
企業価値10億ドル超えの未上場スタートアップ、いわゆるユニコーンの数で日本はアメリカや中国に大きく後れを取っています。実証実験の許可などに時間がかかることも一因で、研究開発費の総額でも、この失われた30年の間に差は広がる一方です。 日本のスタートアップの壁の一つを壊そうというナスコンバレー。「ナスコンバレー協議会」の若林裕介さんは仕掛け人の一人です。今月1日に始まったグランピングの実証実験を見せてくれました。
実験が行われているのが、ナスコンバレーの山の中腹です。そこに完成した2人で1泊6万円ほどの宿泊施設「ミワタス ナス」。バルコニーにはジャグジー、そしてサウナ。部屋の中には、くつろげる布団もあり、キッチンには調理家電も完備されています。 実はこの施設、車で牽引して動かせるトレーラーハウスです。ハウス自体は住宅大手「ミサワホーム」の事業の一つですが、屋根の上には太陽電池パネルが設置されています。 実験のテーマは、電力会社と繋がっていない状態で人が快適に暮らせるのか。若林さんの出向元である住環境サービスを手がける「ライフル」グループが主体の実験です。 「有事の際には避難所として被災地に持って行き、使ってもらう」(若林さん) グランピングの実証実験をする山で若林さんのもとを訪ねてきた人がいました。 「広大なエリアで自動運転を実装したい」(日本駐車場開発グループの五十嵐弘樹さん) 「自動走行の実証実験と、空き家をドローンで探す実験が進む」(若林さん) 今後の実験計画を話すナスコンバレーの土地所有者「日本駐車場開発グループ」の五十嵐さん。実証実験に土地を無償で提供するその理由を聞くと「那須地域に今まで訪れなかった人が足を運ぶようになった。地方では人が来ないと経済も循環しない。良い効果が期待できる」と、地元も含めた好循環が生まれていました。
ナスコンバレーから世界へ
ナスコンバレープロジェクトから派生した製品の原材料が敷地内のある場所に。ナスコンバレーの参加企業なら活用できる温泉を訪れると、従業員が源泉を集めていました。この源泉が送られた先が、東京のスタートアップ「ルフロ」の本社です。 「こちらは那須から届いた源泉。これからクラフト温泉をつくる」(「ルフロ」の三田直樹代表) クラフト温泉とはルフロが独自技術で作った温泉の成分を含む液体のこと。2年半かけて製法を確立しました。お湯に溶かせば温泉を再現することが可能で、この那須のクラフト温泉には国内外から引き合いが来ています。 さらに、ルフロの三田代表が打ち合わせていた相手は中東オマーンの担当者たち。オマーンにも天然温泉が多いため、ルフロはここから独自の温泉を製品化する技術を海外展開していきます。 「私たちの取り組みに対して投資をしていこうと言われた。10億から15億円の投資規模になる」(三田代表) ナスコンバレーを起点にした技術で海外を攻めようとしています。 日本のスタートアップがぶつかる壁をなくすナスコンバレーの挑戦。将来はこの仕組み自体を全国、そして世界に輸出していけるような場所にしていきたいといいます。 ※ワールドビジネスサテライト