毛利悠子の愛すべき機械が示す「自然の本質」とは?|青野尚子の今週末見るべきアート
モネの絵の脇には毛利が実際にベリールで撮影した映像が投影されている。スピーカーからは海の音やパンデミックでの隔離期間中の室内の音などが流れる。その音をマイクが拾い、コンピュータによってMIDI信号に変換されてピアノに伝えられて、ピアノが自動演奏される。不規則に動く鍵盤はベリール島に打ち寄せる波のようにも見える。
毛利の出品作品《めくる装置、3つのヴェール》はデュシャンの《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》(通称《大ガラス》)の構造を転用したものだ。デュシャン作品は下部の「独身者の機械」のエネルギーが上部の「花嫁の世界」に伝達する流れを表現していると考えられている。毛利の作品もさまざまな経路であるオブジェから別のオブジェへとエネルギーが伝達されている。
会場ではこのほかにも音をたてたり動いたりするオブジェが並ぶ。柔らかそうな見た目と相まって、まるで生きているように感じられるものも。磁力や電力で機械が動く、その様子を私たちが見る、それらも自然現象の一つであって、そこにも「自然の本質」が隠れている。
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子―ピュシスについて』
〈アーティゾン美術館〉6階展示室 東京都中央区京橋1-7-2。10時~18時(毎週金曜日は20時まで)。月曜、12月28日~1月3日、1月14日休(1月13日は開館)。日時指定予約制:ウェブ予約チケット 1,200円、窓口販売チケット 1,500円。学生無料(要ウェブ予約)。
text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano