ミートボール「おべんとクン」50年 最初は中華風肉団子 石井食品「イシイのおべんとクン ミートボール」(上)
加熱せずそのまま食べられる
広く親しまれている、イシイのおべんとクン ミートボールだが、意外と知られていない事柄も少なくない。例えば、加熱せずそのまま食べられる点は今でもまだ知らない人がいるようだ。公式ホームページの「よくある質問」欄でわざわざ項目を設けて「加熱調理済みですので温めずにそのまま召し上がれます」と明記している。 むしろ、温めてしまうと、弁当に入れる際、周囲の料理に熱が伝わって、いたみが生じるおそれがある。公式Xでは「そのままがオススメです!」と、加熱しない使い方を推奨している。 もともと弁当用に使い勝手のよい「イシイのおべんとクン ミートボール」だが、「そのまま投入」方式を使えば、さらに手軽になる。弁当を用意する保護者の負担も軽くなりそうだ。
半世紀で培った、世代超える親しみ
無添加調理、アレルギー対策、トレーサビリティーなどの取り組みは今では多くの食品メーカーが導入済みだ。法制度が整備されていったことが企業の背中を押した。消費者側から誠実な対応を求めるニーズが強まったことも企業に対応を迫った。 しかし、石井食品は世の中の動きがはっきりする以前の段階から自主的にこれらの「安心・安全」を重んじた取り組みを進めていた。品質保証番号を導入したのは2000年と、四半世紀も前。2006年には卵、乳成分と縁を切っている。「時代が追いついてきたような印象もある」(古屋氏)という。 体の小さい子どもは食品の影響を受けやすいだけに、子育て世帯はそうした企業姿勢に敏感だ。子育てに寄り添うような石井食品の動きは自然と消費者からの信頼感を育むことにもつながった。 専業主婦が減り、家事分担が当たり前になっていく流れは弁当を取り巻く景色も変えていった。時間を掛けて弁当を作り込む余裕が失われていく中、「レンチン」での温めすら必要としないイシイのおべんとクン ミートボールは弁当づくりという小さな社会課題の解決に道をひらいたともいえるだろう。 中華風肉団子だった最初の「ミートボール」が登場してから半世紀の歩みは、イシイのおべんとクン ミートボールを食べて育った子どもたちが親、祖父母となるほどに長い。その間に受け継がれた舌の記憶は現在も続くシェアトップの下味になっていそうだ。 居場所は弁当にとどまらない。2024年2月に発売した「いつでもミートボール」は常温での長期保存が可能だ。保存可能期間は製造日を含め1年間。自然災害が相次ぐ中、非常食の重要性が増している。加熱調理が不要なミートボールは理想的な非常食になる。 食べ慣れたミートボールの味は非常時にあってはいっそう心強く感じられるだろう。「(防災備蓄を消費しながら買い足す)ローリングストックを食生活に取り入れる家庭が増えている。1年間いつでも食べられる商品はストックに向く」(古屋氏)。子どもが好むミートボールは非常食と日常食を兼ねる形で家族を支えるという新たな出番を得た格好だ。 商品名の通り、弁当用としておなじみのイシイのおべんとクン ミートボールだが、実は食べ方のバリエーションが多彩だ。照り焼き味や工場直送、食物アレルギー配慮タイプなど、商品のラインアップも幅広い。後編では奥深い「おべんとクン」ワールドにもう一歩踏み込んでいく。