「全員が苦しむと思った」中山秀征が明かす“ポスト飯島愛” 久保純子・しょこたんなど『ウチくる!?』の決断と変遷
『ウチくる!?』『THE夜もヒッパレ』『TVおじゃマンボウ』など人気番組のMCとして活躍し、『静かなるドン』では俳優としても存在感を発揮、現在も情報番組『シューイチ』などで絶妙な緩急で番組を仕切る中山秀征さん。 【写真を見る】『ウチくる!?』初代女性MCの飯島愛さん 1999年にスタートした『ウチくる!?』は、ゲストの生まれ育った土地を巡って多くの芸能人の素顔を映し出し、長寿番組として親しまれた。中山さんと共に番組の人気を支えたのは、2008年に亡くなったタレントの飯島愛さんだ。しかし、07年の芸能界引退を機に降板することになり、中山さんや制作陣は後任選びに頭を悩ませたという。 “愛ちゃん”という大きな存在の後で番組を支えたのは、どんな芸能人だったのか。中山さんの著書『いばらない生き方 テレビタレントの仕事術』(新潮社)から、その裏側を紹介する。 (※以下、同書より引用・再構成しました)
“意外な人選”は「全員が苦しむと思ったから」
長寿番組ほど、変化を続けているもので、19年続いた『ウチくる!?』に、大きな変化が訪れたのは2007年でした。愛ちゃんの芸能界引退に伴い、2代目MCに元NHKのアナウンサー、久保純子さんが就任した時です。当時「意外な人選」と話題になりましたが、実は裏話があって……。 僕も参加した後任選びの会議では、当初、番組をいい意味で壊してくれる“ポスト飯島愛”を探そうと、グラビアアイドルなどの名前が挙がっていました。ただ、どうにもしっくりこない。全員が頭を悩ませる中、僕は思い切ってこう言いました。 「愛ちゃんと正反対のキャラクターはどう?」 なぜなら、ポスト飯島愛を求めると、この先、全員が苦しむと思ったから。「愛ちゃんなら、もっとこうしていたはず……」と、きっと抜けた穴をみんなが意識することになる。それは新しく入ったタレントさんにも失礼です。 ならば、タイプの違う人と組んで、今度は“中山の立ち位置”を変えればいい。自分を変えることは、『TVおじゃマンボウ』で麻木久仁子さんと組んだ時に身につけた僕のスタイルで、その点は、自信がありました。 快諾してくれた久保さんには、事前に「あくまで久保さんらしく」と伝えていたものの、不安だったはず。 でも、いざ始まれば、進行は完璧! 何より驚いたのは、抜群の記憶力でした。 例えば競泳の金メダリスト・北島康介さんがゲストの回。僕が話の流れで、北島さんに「アテネ五輪(100メートル平泳ぎ)の優勝タイム、何秒でしたっけ?」と聞くと、北島さんは「え~っと……」と、すぐに思い出せない。 そんな時、「1分0秒08ですよね」と、実にサラッとフォローしてくれたんです。この時だけでなく毎回、久保さんは台本や資料にはないデータを、全て頭に入れてきていました。しかも必要な時にだけ、さりげなく出す。「覚えてきてるなら言ってください! もったいないよ」と僕が言うと、「別に普通のことなので……」と。 『紅白歌合戦』の司会で、辞書のように厚い台本を丸暗記していた久保さんにとっては、朝飯前だったのかもしれませんが、あまりの凄さに僕も北島さんも、ただただ驚くばかり。 そんな久保さんだからこそ、ロケでお酒を飲んで酔っぱらってしまったり、衣装のままプールに落ちる、民放バラエティの“洗礼”を受けたりすると、“振れ幅”があって面白い! 彼女の完璧さと意外性に支えられ、僕もかなりラフにやらせてもらい、愛ちゃん時代とは違った、MCコンビの“型”が出来上がりました。