中国の銀行が対露ビジネスから一斉撤退 米「2次制裁」の威力にプーチン大統領も戦々恐々
一方、米政府が、ロシアと中国のビジネスが標的となる新たな制裁を導入した背景には、ウクライナ侵略が3年目に突入するなか、中国がロシア経済を支え、その戦争継続能力を維持させていることがある。
報道によれば、中国とロシアの輸出入を合わせた貿易総額は2023年に、前年比26・3%増の2401億ドル(約37兆円)となった。ロシアの主要輸出産品である原油においては、中国のロシアからの輸入は金額ベースで前年比で約4%増の606億ドルとなった。ロシアによるウクライナ侵略開始以前の21年と比較し、5割程度も増大したという。このような動きは、エネルギー関連企業からの税収を通じ、ロシアを財政面で支える。
さらに米国は、ロシアが中国から工作機械や半導体など、軍事転用が可能な物資の輸入を続けているために、ロシアの軍需産業が制裁の影響を回避しているとの見方を強めている。米政府高官らは中国を名指しして、軍事転用可能な物資をロシアに供給していると批判。米財務省は5月、ロシアへの赤外線探知機やドローン部品などの輸出に関与したとして、中国やトルコなどの約300の企業・個人に制裁を科すと発表した。
■抜け道困難で貿易停滞か
露メディアによれば、ロシア企業はわずかずつであるならば、中国企業への輸入代金の支払いが継続できるケースもあるという。また、中国国内に支店を持つロシアの銀行の助けを得て、支払いを継続するなどの手法が考えうるとしている。
ただ、土田氏は、このような考えには疑問を抱く。「ロシアが自国の銀行の中国進出を加速すると考えられる」としつつ、「ロシアの銀行が中国で支店を新たに開設するには、相当の時間がかかるだろう。仮にロシアの銀行が取引を行っても、やはり中国の銀行が関わる必要が出てくる可能性もある」と語る。
また、中国以外の第三国の金融機関を介して露中企業が取引することも「露中の企業間の取引は決して額が小さくないだろう。そのような取引を、米国との取引がないような小国の金融機関が手掛けられるとは考えにくい」と指摘している。
ロシアを巡っては、2022年2月のウクライナ侵略開始以降、日本や欧米諸国の経済制裁を受けていたが、中国やインドなどの国々がロシア産原油を大量輸入し、制裁効果が薄れていたのが実態だ。今回も、何らかの形で抜け道を見つけ、影響を抑える可能性は否定できない。ただ土田氏は「いずれにせよ、露中間の貿易は停滞せざるを得ない」との見方を示している。(黒川信雄)