伝統芸能「神楽」 外国人客に大ウケ 定期公演の入場者数が過去最多 英語の舞台字幕やチラシ奏功 広島県民文化センター
広島県民文化センター(広島市中区)が定期開催している神楽公演で、2024年度の外国人入場者数が過去最多となった。9月末で2210人となり、24年度13公演を残しながら、これまで最多だった18年度の2003人を大幅に上回った。英語の字幕設置やチラシ配布など、インバウンド(訪日客)対策が効果を発揮したとみられる。 【写真】神楽の定期公演を楽しむ外国人客たち 2日夜、安芸高田市の高猿神楽団による「悪狐伝(あっこでん)」の舞台は大歓声に包まれた。この日の外国人入場者数は217人で、1日あたりの過去最多を更新。東京のインターナショナルスクールの修学旅行で訪れたインド出身のタニーシャ・クラールさん(17)は「演者と距離が近い場面もあり、とても面白かった」と笑顔だった。
神楽団が週1回、舞を披露
同センターでは14年度から県北部などの神楽団が週1回、舞を披露している。順調に外国人客を増やしてきたが、20、21年度は新型コロナウイルスのためゼロに。23年度は、英語字幕モニターや交流サイト(SNS)発信などを始め、外国人客が1916人に回復したものの、最多には届かなかった。 24年度はさらに対策を強化。英語字幕を舞台上部の板へ投影する方法に変更し、どの席からも字幕が見えるようにした。外国人客が多い平和記念公園(中区)のレストハウスでもチケットを販売。9月から、アジア圏に強い旅行予約サイト「KLOOK(クルック)」にも掲載している。
「トリップアドバイザー」でも高評価
旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の口コミ平均評価は最も高い5。「もう少しお金を出したいぐらいだ」などと、外国人からもコメントが寄せられている。英語字幕を担当したフリーの翻訳家で米国出身のレイチェル・ニコルソンさん(39)は「伝統文化に堅苦しいイメージを持っている人もいるが、神楽はステージ演出も楽しめるエンターテインメント。鑑賞した人がさらに魅力を広めてほしい」と話す。 同センターは来春の新広島駅ビル開業や大阪・関西万博などを見据え、関係団体との連携を強化する方針。開演時間が夜のため、宿泊客増にもつながる。上田浩史館長(63)は「ここは広島神楽の登竜門。本場の芸北地方も訪れてもらえるように努め、広島全体を盛り上げたい」と意気込む。
中国新聞社