「刀伊の入寇」の英雄・隆家のキーアイテムは竜!「光る君へ」大宰府編セット美術の裏側
隆家の執務室で目を引くのが「竜」をモチーフにした調度品。唐三彩の花器の取っ手、青磁の香炉、白磁の練り香入れ、印などさまざまなアイテムが「竜」仕様となっている。枝茂川は、その意図を「隆家の荒々しさを表現したかったこともありますが、竜といえば中国の皇帝のシンボルなので中国的要素を感じさせるものとしても竜がよいのではないか。また、四神(玄武・蒼龍・朱雀・白虎)の一つでもあるので」と語る。なお、執務室含め政庁全体がテーブル&椅子のスタイルとなっており、隆家のデスク周りには花氈(文様をあらわした羊毛製のフェルト敷物)が敷かれている。
そして、隆家といえば「刀伊の入寇」。1019年(寛仁3年)に起こった外国の海賊による九州地方への侵攻であり、当時、大宰権帥だった隆家が九州の豪族や武者を束ねて撃退。現地では、隆家は「英雄」と崇められている。本作で合戦シーンが描かれるのは初となり、海戦は伊豆下田ロケで、警固所は「えさし藤原の郷」のロケとスタジオセットで撮影された。
山内は前置きとして、日本に攻め入ってきた異国人たちについては「海賊」「国の軍隊」など諸説あることから、本作ではあえて国籍を定めずに描いたという。
「ある方は“寄せ集めの海賊ではこんな数の舟と人数は操れない、国家の作戦としてやってきた軍隊である”と。目的に関してはさまざまな見方があるので、ドラマではその点や国籍を限定せず、例えば舟は銅鑼やカラフルな吹き流しを飾ったり、一部赤い色を塗ったりして日本とは違う民族の舟がやってきたことを表現しています。ちなみに、舟は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(壇ノ浦の戦い)から一部流用しています」
また、戦の表現においてポイントとなるのが「武士の時代以前の戦い」であること。山内は「あえて強固な防御にはしませんでした。柵を飾ったり陣幕や旗などいわゆる戦国時代を思わせる飾りは一切していません。攻撃は弓を中心に、防御面では奈良時代から伝わる「隼人の盾」のデザインを参考に楯を作りました。また、警固所のセットには弓の名手・隆家の象徴として、鏑矢などを用いた衝立てを飾りました。この鏑矢は射ると音が出るのですが、敵がその音に驚いて逃げたという逸話もあるので、ぜひその鏑矢を印象的に取り入れたいと、隆家の背景に飾っています」と話す。