トヨタ世界全工場、50年にCO2ゼロへ…実現のカギ握る「水素活用」の現在地
生産現場のカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応を進めるトヨタ自動車。「トヨタ環境チャレンジ2050」では調達、製造、輸送、使用、リサイクルを含め車のライフサイクル全体で二酸化炭素(CO2)の削減を掲げる。生産の面ではグローバル全工場のCO2排出を2035年にCNの状態にし、50年にゼロにする目標を定めた。目標達成のカギを握る技術の一つが水素の利活用だ。 【写真】トヨタ本社工場の中央部に整備している水素実証の場「水素発電パーク」 愛知県豊田市のトヨタ本社工場。その一角にあるプラント施設が「水素発電パーク」だ。液化水素タンクや発電装置が並ぶ。19年9月に最初の設備となる車載燃料電池(FC)発電機を設置した。21年1月には東芝製の定置式FCを、22年4月には水素混焼ガスエンジンを導入するなど徐々に整備を進めてきた。 同パークでは例えば、トヨタの燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」のFCスタックを定置式発電機として利用した装置を実証している。同装置の発電能力は50キロワットで、本社工場のピーク電力である6万5000キロワットに比べるとごく小規模だ。 「パークの主目的は技術の『手の内化』。安く、安定的に使うための実証施設」。プラント・環境技術部生産環境室の担当者はこう説明する。「手の内化」はトヨタがクルマづくりで長年こだわってきた基本姿勢でもあり、まず自らやってみて原理原則を理解し、現場で改善を繰り返しながら技術の競争力を高めることを指す。 同パークの車載FC発電機では、定置式に置き換えた場合の特性や耐久性を確認している。車で利用する場合は停止と稼働を繰り返すが、定置式では連続稼働が基本。実証を通じて安全面や保全のノウハウを得ながら、車載スタックのうち、より多くの部分を転用できるように改善。市販の定置式FC発電機に比べて低コストな装置を目指す。 液化水素タンクでは内部と外部の温度差で、貯蔵する水素の一定程度が気化してしまう課題がある。同パークではこの気化した「ボイルオフガス」の回収に取り組む。また一度使用した不純物の混じる水素を回収し、再利用する取り組みなども進めている。 プラント・環境技術部生産環境室では「30年に向けて使用する全体量を増やしていく。やるべきことは見えてきた」と手応えを示す。